2008-10-06

あるエンジニア

その人は、高校卒業して最初は自動車整備のお仕事をされていましたが

現場ではなく営業に配置換えがあり(リストラ目的の異動でもあったらしい)

退職されて関西のとある家電メーカーに中途入社されたそうです。

最初はブラウン管テレビ生産ラインの組立て工程での採用でしたが

自動車会社で培われた技術でもって機械の修理・メンテナンスが得意ということで

海外工場を建てる時のライン設計も任されるようになり

その後、開発部門の所属になられたそうです。

とはいえ、ブラウン管テレビの中身は組立ててたけど改めてじっくりみる機会は初めて。

と、いうわけで見てたらエンジニアの血が騒いだ。

「…ここのスペースって、こうしたらもうちょっと小さくていいんちゃう?」

それを聞いた周りの人は有名な大学・院を卒業した専門家ばかり。

みんな口々に、「それでは熱が逃げなくてダメなっちゃうんですよ」と言う。

最初は頭いい人等がそう言うならと思ったけど

やっぱり製品をじっと見てたら自分の考えを試してみたくなる。

コッソリと整備工場時代からの友人や会社の別の部署の人に頼んで

自分がイメージしてた部品を作ってもらった。そして組み合わせてみたら…

何と、

ちゃんと思った通りにテレビとして映るし、従来よりコンパクト

もちろん排熱もうまくいくし、問題なく動きます。

反対していた人達現物を見て納得。

ご本人はすごい鼻高々。

私もその製品電気屋さんでみたことがありますが本当に他社に比べて薄かったです。

当時は液晶プラズマ薄型テレビもほとんど市場には出てない時期。

すごく画期的商品で、爆発的にうれたらしい。

さすがに、うちは買ってはいないんですけどね。

「でもな、、、」

そう、ここからが私のこのおっちゃんが大好きなポイント

彼は自慢話だけに終わらずに言葉を続けます。

アイディアは自分のできる範囲で形にできた…」

でも、それを製品として作っていくには、まず図面にしないといけない。

俺はそれはすぐにテキパキできひんねん、できひんねんけど

俺の周りには本当に優秀な人に恵まれてるからそれをしてもらえるんや。

特許かって申請しないといかんやんか。

その書類だっていっぱい書くのが俺は苦手やねん。

俺一人が考えたかって、そいつらがいてくれなできひん。

できひんことあるから、俺は俺のできることやるんや。

お互いできることをやっていくから高卒でも何も引け目感じることない。

その方は、大企業やから自慢するとかじゃなくて、本当に心から仕事を楽しんでいて

会社という組織のよさを十分に分かってて、周りを尊敬しつつ自分を卑下することもないんです。

社会人になりたての時にこういう人に出会えて本当によかったと今は思います。

時々、「もっとエリート社会を引っ張って行くべき」という意見を時々聞くと

この人の顔が頭に浮かんで、エリートだけじゃない方が絶対世の中上手く行くし!って反論したくなるんです。


追記

id:narwhal さん、

「engineering, 教育, 労働, 社会, ネタ 前半のみコメント。なんかアバウトな熱設計…。こわいなあ。で、この手の話を無批判に美談化するのはいかがなものか。試してみたらたまたま動いたではなく、動くべくして動くように設計するのがエンジニア仕事。」

というコメントいただいたのでちょっと追記。

開発部門のメインの人たちは、電気が専門だったんですね。

で、われらがオッチャンは自動車エンジン触ってたことがあるから

「この素材ならもうちょっとイケるんちゃうの」という点くわしかったんです。

オッチャンの試作品からマッシュアップするときにはやっぱりその人らの専門知識がすごかったらしいです。

何人かお話したことあるけど、ほんまに頭の中計算機入ってるみたいでした。

だから、id:xeverさんのコメントもちょっと当てはまらないかなと思います。

今やったら海外工場か国内の派遣でまかなってる作業を

昔は正社員で単純作業だけじゃない仕事も任されてた時代の話。

このオッチャンだけじゃなくて、他にも同じぐらいの年代の人たちと話したら

「あの工場のラインの効率化の提案、ほとんどわしがやってんで」とか

そういうちょっといい話は誰からでも聞けます。

一番華やかな例をここに書かせていただきましたけれども。

  • 増田さん補足ありがとう。 最初思ったのとは少し違う話だったみたいですね。メカニカルデザインや熱設計に周囲の人たちは詳しくなく、その方のほうが逆に多少は経験があるという状...

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