彼女はそういったけれど、僕にはよくわからなかった。
夏の終り/肌寒い風、気温/蝉は鳴いているけれど、もうまばらで。
彼女の顔よりも、ぼくはそっちのほうをよく覚えていた。
彼女は、生きているのが辛そうだった。
彼女が世間を呪う時、彼女は自分自身をも呪っているからなんだと思う。
彼女は、世界と同一だったといえるのかもしれない/その、ちっぽけな彼女の世界の中で。
それは、たぶん大人びた彼女からすればとても幼児的な、行為だったろうけれど。
あれ、やっぱりぼくにはよくわからないや。
僕は彼女とよく川沿いの道を歩いた。
新しくできた図書館へとつながるあの道を。
彼女は本を読むのを嫌がった。
ぼくは本を読むのが好きだった。
彼女は車が好きだった。
ぼくは車なんてどうでもよかった。
車の中で、僕たちは何度も愛し合った。
公園で、トラックの運転手が覗き込んだときはどうしようかと思った。
でも、僕はどこか誇らしげだった。
彼女の芸術的な白い肌が、このおじさんの目を虜せばいいと思った。
それは、ぼくのものだったから。
振り返ってみれば、ぼくはあまりにも科学のほうによりすぎていて、
彼女はあまりにも慣習のほうによりすぎていた。
僕が信奉したのは、見えざる手だったけれど、彼女が信奉したのは、彼女自身が住むコミュニティの慣習だった。
僕たちは、いつか、あたりまえのように、別れた。
彼女が別れを切り出した。僕は拒否した。
だが、現実は進行した。あとで人伝いに聞いた話によると、もうこのころから彼女には男がいたんだと。
だけど、それはもうどうでもいい。
駅のどまんなかで彼女を目撃してしまったことであり、
その彼女は、おなかを大事そうにさすっていて、そのお腹が少し……膨らんでいたこと、それだけなんだ。
君は、どこか幸せそうに見えた。すぐ、向こう側のホームに訪れた電車がその姿を覆い隠すまで。
僕は、やっぱり君が信じてる道徳や、慣習や、そういったものよりも、科学を信じるから、
嫉妬や、後悔や、恨みや、愛情や、NTRや、いろんな感情よりも、なんていうのかな、君に。
なによりも。
祝福を、送ろうと、思う。
どうか、あなたが幸せでいられますように。
それだけを祈ります。ずっとずっと、あなたが、誰よりも、幸せでいられますように。
今でも、そしてこれからも、ずっとあなたのことを思い出すでしょう。
そして、そのたびに、いろんな感情を、ムリヤリに祝福で覆い隠すでしょう。
だいすきでした。さようなら。愛してました。ばいばい。
文章の質(つまりはセンチメンタリズムの質)がベタでださい。