2008-06-22

 人間の欲求は、「性欲」とか「食欲」とかといったもっともプリミティブな欲求が一番の基底にあって、より高度な欲求はその上に複雑な構造的・社会的欲求として芽生える……という階層的な見方がある。マズローの欲求段階説なんかがその典型。

 この考え方でいくと、人間にとっては生理的欲求こそがもっとも基本的でありまた要素的なものであって、その他の欲求はこれらの要素的欲求が充足した後に、これらの欲求の複雑な社会的組み合わせなどによって初めて生じるものだ、という見方を取りがちになる。

 でも、人間の心理がそのような「単純な要素的欲求の複合体」として構築されていることは、別に物理的実体として観察されているわけではない。

 ひとつ思ったのが、「欲求」ないしは「性欲」といったものは決して実体として存在するわけではなく、あくまでも人間心理の動きを言葉に表現していった中から、いくつかの共通した動きの傾向性を「欲求」というひとつのカテゴリーにまとめ、さらにその中で「性行動への欲求、ないしはそれに準ずるものと認められる種類の欲求」を「性欲」という名前のサブカテゴリーにまとめた……という順番で生じたのではないか、ということだ。

 ホンネ主義においてはしばしば、この種のプリミティブな欲求こそが人間としてもっとも基本的なホンネなのであって、それ以外の欲求はホンネではなく偽善や建前やウソに属すると捉えられるけど、もしかしたらどんな欲求だって、他の欲求よりもプリミティブであったり要素的であったりということなんかないんじゃないだろうか。

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