行動力に溢れていて尚且つ喋りが面白いという、
そして俺のようなクズにも屈託無く話しかけてくれるという人格者で、
眼の輝きからして俺みたいな底辺とは比べ物にならない、
そんな同級生に久しぶりに会った。
別人かと思うぐらいに変わっていた。
頭髪は手入れが全くされておらず、髭は生えるままに任せ、
腹は前に突き出し、手足の肌はやけに白く、服装はよれよれのスウェット。
かつてクラスメイトを楽しませるジョークを連発していた口からは、
排泄物のような臭いが漂っていた。
快活な雰囲気は完全に失われていて、代わりに周囲を陰鬱にさせるような気配を纏っていた。
何よりも眼が違う。
あの気力が充溢し、本当に輝きを発しているかのように思えたあの眼。
実家に帰省し、お使いを頼まれて訪れた先のスーパーで偶然見かけたのだ。
俺は信じられない思いだった。あの彼が? 嘘だろ、と思った。
確かめるべく近づくと饐えた汗の臭いが鼻をついた。何日も風呂に入っていない臭いだ。
名前を呼んで、話しかけた。
びくんと身体が過剰に反応し、ばっと振り向いた。その途端に、荒い息が口臭を伴って俺の鼻に届いた。一歩引いてしまう酷い臭い。
再度声をかけると、彼も俺が分かったようだ。
そして「それじゃ」と言って小走りで去ってしまった。
長い髪が背中で左右に揺れているのを眺めながら、俺を呆然と彼を見送った。
あれが、あの彼? あんな風な人間になれたらなぁと羨望と時には嫉妬を抱きながら憧れたクラスメイト?
何があったのかは分からない。学校を卒業した後では連絡などとっていなかったからだ。
でもなんとなく、クラスの階級ピラミッドの上の方にいた連中はその後もそれなりに上手くやっているものだと思っていた。
自分のような底辺を這いずり回るゴミ虫とは比較にならない輝かしい人生を歩んでいるものだと。
切ないような寂しいような、複雑な気持ちのまま買い物を終えてスーパーを出ると、駐輪場に彼が居た。
ママチャリの籠に買い物袋を詰め込んで、走り出したところだ。
呼び止めようとしたが、やめた。きっと無視されていただろう。
俺も自分の家に向かって歩き出した。
・・・偶然とはいえ、彼と会いたくなかったなと思う。
単なる別人だったと言うオチ