僕には好きな人が居て、その人もどうやら僕のことを好きらしかった。
僕はいわゆる非モテというやつで、恋人なんてついぞ出来る気配はなかったけど、元気に実直に、自分の良心に反さないようには生きていた。、
彼女はそんな僕の内面(他人からすぐ見えるところだから外面か)をなぜだか好いてくれたようだった。
彼女は自分の感情を隠すことが下手なようで、彼女が僕に好意を抱いてくれていることは、すぐに僕の知るところとなった。
女性からの好意を感じたことのなかった僕はいつしか、彼女のことを特別に気にかけるようになった。
彼女と同じ空間にいるだけで意識してしまうし、つい姿を目で追ってしまう。
友達に相談したら、それが好きになるということなのだと教えられた。
かくして僕と彼女は、たいした会話も交わさないまま両思いというやつになっていたらしい。
だけど彼女が好きなのは理想化された僕で、僕が好きなのは自分を好いてくれる彼女なのだった。
次第に彼女と言葉を交わすことになった僕が最もよく聞いた単語は『意外』だったような気がする。
僕のだらしない実態を聞いて驚く彼女相手に自虐みちた笑顔を浮かべながら、彼女が好きなのはこんな自分ではないのだと繰り返し再認識した。
僕の方こそ本当に彼女のことを好きだったのかと言われると疑問符がつく。
つくのだけれど付き合うということに憧れのような感情をいだいていた僕は、彼女に告白することになった。
彼女の好きそうな状況で彼女の好みそうな台詞で行った告白は、5年よりも長い5秒程度の沈黙の後に受理され、めでたく僕の彼女いない歴がリセットされたのだった。
付き合うということが、僕にはよくわかっていなかったのだと思う。
メールを送るにしてもどんなことを言えば良いのかわからないし、
結局のところ、息苦しさを感じながら彼女と会話するよりだらだらインターネットを見ていた方が僕の性にはあっていたのだ。
僕と彼女は申し訳程度に数回のデートを重ねたが、その度に彼女の僕に対する気持ちが離れていくのがわかった。僕の彼女への気持ちも同様だったから。
電光石火の早業で、僕は彼女に振られることとなった。
僕は自分の最後の言葉が「ありがとう」だったのか「元気でね」だったのか思い出せない。本当は「ごめんね」と言うべきだったように思う。
気づけばもうあれから5年も経っていて、僕の彼女いない歴は着々とかつての記録に近づいている。
つきあうということがどういうことなのかは、未だもってわからないままだ。
救われないパターンだ と言う自分も、異性に対する好意・・・恋愛感情が分からない訳だけど というか、もっと疑わしいのは、この世界で自他共に存在を認められている恋愛感情ってあ...