2010-02-19

ケータイ小説セカイ系

彼らを友人と呼んでもいいのかな。

そう呼んでいたいのは私の一方的な思いなのかもしれない。

彼女とは小中の同級生。

でも彼女とは元々そんなに仲がよかったわけじゃない。

ただ共通の友達がいて、なんとなく遊んでいただけ。

共通の友達がいなければ関わりあうこともなかったのだろう。


ひさしぶりに会ったとき、彼女恋人同棲していた。

3人なべを囲んだ。

温かい気持ち。

少しだけ唇を噛んだ。


それからくその家に出入りするようになった。

迷惑かな?とも思ったけど、彼らはいつだって私を迎え入れてくれた。

あんなことしたのに、彼らは私を許してくれた。


「俺達、結婚するんだ。」

わかってた。でもその時は大げさに驚いたふりをして「おめでとう」

3人、家族みたいだね、って言ってくれてた。

でも彼らは本当の家族になる。

私が踏み込むことの出来ない領域。

はじめから踏み込むことが出来なかった領域。


彼女は順調だった。

彼女は恩人だった。

でもどうしても好きにはなれなかった。

彼女勉強スポーツもできた。

家族にも周囲にも愛されていた。

私が父から暴力を受けていた頃に。

私が母からいらない子って呼ばれていた頃に。

私が周囲からいじめられていた頃に。

「もうこういうこと、やめようよ?」

リーダー格の彼女は私をかばった。

私はいじめなんてどうでもよかった。

いじめなんて慣れていたし、友達なんていらない。

世界が私を必要としないなら、私も世界を必要としない。

わたしはいじめっ子よりも彼女を憎んだ。

本当は誰よりもわたしのことを見下していると思ったから。

彼女自分環境と恵みに酔っているだけだ思ったから。

ありがとう・・・って言えばいいの?いい人ぶるのはやめなよ。」


お金で体を売った。V系追っかけの仲間と非合法ドラッグに溺れた。

自分の腕を傷だらけにした。それが私のリアル


ひさしぶりに会った彼女は何も変わっていなかった。

3人なべを囲んだとき、温かい気持ちになった自分が許せなかった。

私は彼を誘惑し、彼は私を拒み、彼女は私を許した。


私は彼女の何を妬んでいたのだろう。


環境

容姿

学歴

ステータス

理想的な恋人


そうだと思ってた。

でも違うんだ。そんなんじゃなかったんだ。


私が妬んだのは彼女の優しさ。

妬んだというのも嘘になる。

そんなものが存在するとは信じられなかった。

いや、それも嘘かもしれない。

そんなものが存在するのなら私のいままでが否定される。

だから嘘であってほしかった。


彼らと出会って、私は自分笑顔を憎むことができた。


私が世界を呪っていたとき、彼女世界を祝福し、

私が世界をあざ笑っていたとき、彼女世界に泣き、

私が世界を歪みと呼んだとき、彼女はその歪みのなかに星のように輝く確かな何かを探した。

もし彼女が私に生まれてきても、きっとそのようであろうとしたのだろう。

世界を愛そうとして、世界を愛することができなくて、世界を信じようとして、世界を信じることができなくて、

世界を解ろうとして、世界を解ることができなくて、世界に訴えかけたくて、世界に訴えることができなくて、

彼女が持っていたものは私になかったもの全て。彼女が守ってきたものは私が捨てたもの全て。


あの2人に加わることは出来ない。私は私の道を歩いていく。

向こう岸の街明かりがまぶしくてもかすかな星の光を探して。

もう手遅れって言われるかもしれないけれど。

振り返って、拾い集めて、また向き直って、走り続けたい。

私が私になるために。私が許されるために。


2人幸せになって欲しい。

助けてくれたあの時言えなかったこと、今なら言えるよ。


ありがとう。

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