はてなキーワード: GUCCIとは
友人と遊び終えた帰りのこと。
それを交番に届ければいいのに、何故か公衆電話BOXの近くで持ち主を待ってた。
20分くらい待って、一人の女性がBOXの中に飛び込んでいった。
もしかしてこの携帯電話の持ち主は彼女かもしれないと思った。すごく何となく。
だから手にしている携帯電話が鳴っても驚くことは無かったけれど、
受話器を取った瞬間に一息で叫ばれたのには驚いた。
「近くにいますよ」と言ってBOXに手を振ったが、
その女性は人が多すぎて俺に気づかないようだった。
なので俺は近くまで行って、コンコン、とドアを叩いた。
彼女は急いで受話器を置いて、慌ててドアから出てきた。
「わーありがとうございます本当にすみません!」
体型はパーカーで上手く隠されていた。でも見た感じ中肉。
彼女には勿体ない、もう少し頑張りましょう、そんな言葉がお似合いだと思う。
俺は携帯電話を手渡してすぐに帰ろうと思ったが、彼女に呼び止められた。
「お礼をしたいから連絡先を教えてください」
だから電話番号を教えて、すぐにその場を立ち去った。
「この間はありがとうございました。送りたい品があるので、とりあえず住所を教えてください」
俺は考えた。もしここで住所を教えたら、もう会わないかもしれない。
そう思ったので、一度会うことを提案した。
俺は待ち合わせの30分前に着いていた。彼女は時間ぴったりについた。
はっきり言ってノープランだったので、すぐ近くの公園へ行った。
ここで初めて彼女の年齢を知った。まさかの小学生。びっくりした。
他愛もない会話をした後鳥居は、
「お礼は何をしようか迷ったんですけど・・・」と言いながら、
リュックの中から何かを取り出そうとしていた。
「あれ?忘れちゃったー・・・」必死になって探している鳥居に、俺は名案を出した。
「じゃあ俺の言うこと聞いてくれる?」
「はい、何ですか?」
「・・・つきあってください」
「は?」
突拍子もない声が漏れた。そりゃそうだ。
二度目ましての相手に告白されるとは思いもしない。
鳥居は俯き、「それは無理です」と言った。
「まだ会ってちょっとだし、恋愛とか考えたこと無いから無理です」
俺はすかさず「ケータイ拾ったの誰だっけ?」と言った。
彼女はしばらく考えた後、「わかりました」と頷いた。
ほぼ予定通り彼女をGETだ。
そんなこんなで始まった鳥居との交際。
どこかにデートもいいんだけど、俺はまず鳥居を綺麗にしてやろうと思った。
服は着れれば何でもいいと言うので、俺のバイト代で服を買ってやった。
無駄毛処理はしたことないと言うので、剃刀でどこを剃るべきか教えた。
化粧なんて興味無いと言うので、女友達を呼んで化粧の仕方を教えてあげた。
痩せなくても生きていけると言うので、せめて毎日筋トレするように言った。
何をしても鳥居はやる気を見せなかったため、
「もし10kg痩せて綺麗になったら好きなものを買ってやるよ」と言ってしまった。
これが間違いだった。1年後、彼女は前より断然綺麗になって、
63kgあった体重が47kgまで減ったと喜んでいた。
鳥居はGUCCIの財布が欲しいと言ったので、渋々買ってやった。
パソコンを買うために貯めていた資金が消え去った。
鳥居は変な奴だった。いや、天然だったと言った方がいいのかもしれない。
いつもボーッと空を眺めて、何かを考えていた。
勉強をしていても、話をしていても、すぐにタイムスリップしてしまうので、
「人の話はちゃんと聞けよ」と注意した時、
最初は不安そうな顔をしていたのに、次第に笑顔になっていった。
「何で怒ってんのに笑ってんのw」と言ったら、「怒られるの好きー」と微笑んだ。
たまに買い物へ行くと、必ずぬいぐるみコーナーへ吸い寄せられていった。
「ペットとか買えば?動くしかわいいじゃん」と言ったことがある。
「だってぬいぐるみは死なないしょや」と笑顔で答えた。まぁ、そりゃそうだ。
鳥居は家にいるとくっついてくる。
俺がソファで本を読んでたら、すぐ隣に座って本を読みだす。
二人でゲームをしているときは、俺の前に座り、背もたれのように使われる。
たまに鬱陶しくなって、「あーもーどっか行け!」という度に鳥居は喜んだ。
何度も拒絶され、何回かしたことはあるが、鳥居は深刻な顔をしていた。
その一方で大人っぽい面もあった。本当にこいつは俺より年下なのかと疑うこともあった。
何でも一人で解決したがって、俺が聞かない限り悩みや不満を言わなかった。
「もっと頼ってよ」と言っても鳥居は笑顔で、「だって悩みなんて無いもん」と返されて悲しくなった。
交際は順調で、別れを切り出すほどの喧嘩なんて無かった。
俺はこれからもずっと鳥居と一緒にいたいと思った。それは結婚という意味で。
だからある日、いつものように自宅デートをしている最中、俺は伝えた。
「結婚を前提に付き合ってくれませんか」
ぶっちゃけて言えば確信があった。絶対に鳥居はOKする。でも現実はそううまく行かなかった。
「ごめんなさい」
俺は何となく予想できた。まだ中学生だからとか、結婚なんてよくわからないとか、
そんなことをきっと鳥居は考えているのだろうと思った。
「俺のこと嫌い?」わかりきっている答えを聞く。
「嫌いじゃないよ」やっぱり。
理由がわかったつもりでいたので、それ以上詮索することは止めようとした。
けれどやっぱり気になって「何で駄目なの?」と聞いた。そしたら鳥居は話し始めた。
「私は俺のことが好きだよ」
「でもね、俺は私にとってのお父さんなの」
そう喋ってる途中から涙が溢れてきて、言葉が詰まっていた。
だから鳥居が少しずつ話すことを聞いているしかできなかった。
鳥居は3歳の時に父を仕事中の事故で亡くし、母親の手で育てられた。
そのせいか父に強く憧れていた。小さい頃は薄らとしか考えていなかったけれど、
そんな時に俺と出会い、最初は男性と接することに戸惑っていたけれど、
俺の振る舞いが理想の父親像にそっくりで、いつしか俺と妄想上の父を重ねてしまっていたらしい。
それで俺は気づいた。疑問だったことがすべて繋がった気がした。
人生や生死について真剣に考え、恋人同士がする行為全てを拒否していたんだ。
プロポーズを失敗した悔しさ、鳥居の悩みに気づいてやれなかった悔しさ、この状況をどうすることもできない悔しさ。
それらが全て浮かび上がって、俺も泣いた。
その後俺は考えた。
父親としてしか見ていないのならば、結婚したら夫婦となるわけだから、
関係ないんじゃないの?父になるんだし。って思ったこともあったけれど、
きっと鳥居の時間は3歳で止まっているんだろうと考えれば、少しわかった気がした。
もしかしたら最初から俺のことなんて好きではなかったのかもしれないとも思った。
半ば強制的に交際を始めたわけだし、嫌気がさして嘘を言ったのかもしれない。
でも鳥居は嘘をつくのが苦手だから、それは無いはずだと思った。そうだと思いたい。
というか、俺が逃げたんだ。鳥居の背負う過去に気づいたあの日から。
だって勝てる筈が無い。鳥居は妄想に恋してる。妄想が解けない限り、俺は鳥居から愛されない。
それならいっそ鳥居を捨ててこの世に腐るほどいる女性と交際する方が良いと考えた。
鳥居とは違ってかわいいし、一緒に色々な場所にデートに行けるし、すぐやらせてくれるし。
いいことばかり筈だったけれど、どうしても鳥居を彼女に重ねてしまう自分がいた。
鳥居だったらあーするだろうな、こんなことはしないだろうなって、常に意識してしまう。
もうここまで来ると、一種の鳥居病なんだろうなと自分で思っていた。
そのせいで彼女ができても長くは続かなかった。
俺はもう鳥居しか愛せないと思った。
けれど鳥居はどこにいるのかわからない。
そんな状況が続いて早3年。先日増田を読んでいたら、こんなのを見つけた。
この増田を書いたのは鳥居かもしれないと思った。すごく何となく。
もちろんこれは俺の妄想だ。