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2007-02-13

[]2/11 y

せいかちゃんからバレンタインチョコレートの作り方を教えてくれとお願いされたときはとてもびっくりした。そしてとても悲しかった。いつかはそんな日が来るだろうとは思っていたけど、実際に来てみるとやはりショックだった。私の一番であるせいかちゃんに、私じゃない一番の人ができることは。もちろん、今までもそうだったんだろうけど、そうと決まったわけではなかった。一番かもしれない人が沢山いるだけだった。でも、せいかちゃんが、あの料理が上手じゃなくて、バレンタインに誰にもあげたことがないせいかちゃんが、誰かにあげるということは、そのために勉強までするということは、つまりそういうことなんだ。それ程までに好きな人が、せいかちゃんにとっての一番の人ができたということなんだ。

その後のことはほとんど覚えてない。気がついたら学校についていて(あんなに楽しみにしていたせいかちゃんとの登校時間にもかかわらず)、気がついたら学校が終わっていて、気がついたら自分の部屋に帰っていた。そこでようやく、ぼーっとしていたことに気がついたけど、すぐにベッドの上に倒れ込み、私より一回り小さいだけの、くまさんのぬいぐるみ、あらいさんを抱きしめて泣いてるうちに、気がついたら寝てしまっていた。

2007-02-12

[]2/10 s

「なあ、ゆき。バレンタインチョコの作り方を教えてくれないか?」

平静通りに言えたと思ったが、実際の所、どうだったかはわからない。心の中ではそれどころではなかったから。

なぜかあたしはチョコを貰う機会が多かった。女なのに、だ。確かに悪い気はしなかった。元々甘い物が好きではなかったので食べるのは苦労したが、好意を向けられて悪い気はしない。でも、ほとんどは好意の、友情や親愛としてのチョコだったけど、中には本気であたしに愛情を持ってくれた子もいた。けど、あたしには恋だの愛だのって桃色なことはよくわからなかったし、彼女たちにそれを持てそうもなかったから、断った。彼女たちは取り乱すことはなかったけど、そうですよね………でも…ありがとうございました…!と、涙を目に浮かべながらも、精一杯の笑顔を作って返事されたときはさすがに心が痛んだ…

そういったわけで、あたしにとってのバレンタインとはそのようなもので、誰かにあげたり、ましてや告白するものではなかった。でも、今年はあげる立場になりそうだ…率直に言えば、好きだって伝えたい人ができた。

彼女たちには悪いが、あたしに告白して泣く少女たちを見て、泣くのならば告白しなければいいのに、と思ってしまったことも少なからずあった。でも、いきなり告白されて、いきなり泣かれたあたしの立場にもなってほしい。あたしが悪いのか?と思ってしまうこともあるだろう。でも、今なら彼女たちの気持ちがわかる。好きだって伝えたい…伝えなければ胸がはりさけてしまいそう…あたしがこんなこと言うだなんて知ったらみんなに笑われてしまいそうだけど、好きだって気持ちを知った今は心の底からそう思えるんだ…

でも、料理一つ作れないあたしがチョコレートなんて作れるとは思えない。自分一人でやろうとも思ったけど、家庭科の時間に小麦粉と卵と砂糖毒物を作りあげてしまったあたしには到底できるとは思えない。クラス部活のやつにもこんなこと恥ずかしくて頼めない。だから、あたしは、いろいろと恥ずかしい気持ちを我慢して(一週間前から言おうと思ってたけど一度も言えなかったし風呂やベッドの中でシミュレーションしてもいつも顔が真っ赤になって最後まで言えなかった)、幼馴染みのゆきに、清水の舞台どころかランドマークタワーから飛び降りる思いで、頼んだ。ゆきは料理が上手だし、それにゆきならあたしがチョコを作ると言っても、驚きこそすれ馬鹿にしたりなんて絶対にしないからだ。絶対に。ゆきはそういうやつだから。

[]2/10 y

「ゆきー!早く行くぞー!」

「あ、もうちょっと待って!」

「もう本当に置いてくよー?」

「もうちょっとだから待ってよー!」

「………。」

「せいかちゃん?せいかちゃん!?」

冗談だよ、冗談。でも、早くしてくれよー。」

「もう行くから!本当に待っててね!」

「わかった。わかったよ。」

せいかちゃんは私と違って準備が早いからいつも私が待たせてしまう。他にもいろいろと違ってて、例えば私は体育で2以上取ったことない運動音痴だけど、せいかちゃんは陸上で県大会に出るくらい運動神経抜群だし、私は極度のあがり性の上人見知りだけど、せいかちゃんは誰とでもすぐ仲良くなれるし、他にも他にもいっぱいあるんだけど、せいかちゃんと比べると落ち込むからそれくらいにしておこう…

だからせいかちゃんは私の理想で、憧れで、そして私の一番なんだけど、でも、多分せいかちゃんは違う。家がお向かいさんで、せいかちゃんとは小さい頃からお友達で、学校もずっと一緒だったから、朝は迎えに来てくれるだけ…

学校に行けばせいかちゃんはみんなの人気者で、みんながせいかちゃんを大好きだから…

私はその中の一人で、たまたませいかちゃんと昔からのお友達ってだけ…

でも、私はこの時間が一番好き。だって、せいかちゃんを独り占めにできるんだから。だから、学校までの20分は、他愛もない話ばかりだけど、私にとって何よりも大切な時間…だった。せいかちゃんのあの言葉を聞くまでは。

 
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