この世に生を受け何十年と揉まれし者なら、もうお気付きのことでしょう。
そう、賢明なるあなたならもうご存知の筈です。
血反吐(ちへど)を吐きながらもがむしゃらに勉強し、他人を蹴落とし陥(おとしい)れてでも、いい大学からいい会社へと、そんな風に人生を切り開いてきた、そんな努力家のあなたには、この世の中では相当の幸せが用意されているいることを。
時の流れに身を任せた漂流者、ただ指をくわえて見ているだけの傍観者、時代を読み違えた愚か者、歩みを止めてしまった怠け者、この世に出でし時より他人に寄り添ってばかりの臆病者、自ら思考することを忘れてしまった凡夫(ぼんぷ=凡人)達には、誠にお気の毒なことですが、幸せは有りません。
世の中というものは、圧倒的大多数の凡夫達の頭の上で、ほんの一握りの賢い人間達が、幸せを謳歌するという具合に出来ているのです。
「出来ているのです」と簡単に言ってしまいましたが、一握りの賢い人間達は、凡人が安閑(あんかん)としている間にも頭をフル回転し、知恵という知恵を振り絞り、本当に、それこそ血の滲むような努力をして、ようやく手にしているのです。
知恵を絞らない凡人は、僅(わず)かなお金で人に雇われ、「こりゃーいい、何も考えなくても仕事が貰えるぞ、楽チン楽チン」ってな具合にせっせとせっせと働きます。
とにかく言われた事のみを忠実にやっとけば、頭を使わずともお金が貰えて食って行かれるのですから、こんないいものはありません。
そんな凡人達は高い税金も、「お上(かみ)には逆らえまい」と、何の抵抗もなく、せっせとせっせと払います。
考えますれば、こんなお茶目で愛(いと)おしい凡人達が、この世に居るからこそ、賢い人間達は幸せでいられるのですね。
賢い者には、夢のように豪華で裕福な生活と、耳を疑う程の様々な特権が与えられ、その代わりと言っちゃ何ですが、凡人には、有りっ丈の不平等と何の因果もない差別とが用意されるのです。
特権階級の人間が、病院で凡人達と一緒になって順番を待つことなんて有り得ません。待たずとも受診できる特別な入口が用意されているからです。
不幸なことですが、手術ともなれば、有名大学病院の特別医療チームなんかが編成されちゃったりなんかして、最新で最高の医療を準備されちゃったりなんかして、という具合に、凡人であれば普通死ぬところを、生き残って見せるのです。
私立大学であれば、凡人達と暗記力の競争なんかをしなくても、ちゃんと特別の入学方法が用意されているのです。
飛行機なんかも、一緒になって順番を待たずとも、特別な待合室から凡人達より先に乗り込むことが出来るのです。
高級ホテルでは、いやこうなったらもう、有りとあらゆる場所や有りとあらゆるシチュエーションに於いて、凡人達には想像もつかない程の、細心にまで心配りされた最上級のサービスを受けることが出来、また、それはあたかも当然の如く振るまわれるのです。
恐らく、特権階級の人間は、「凡人達よ、我々の幸せのために、今のまま、ずーっとこのまま、愚かなままで居てくれ」と、願っているのでしょう。
「間違っても、世の中の仕組みなんかを知るんじゃないぞ」と、そう思っているのでしょう。
差し詰め、世の中の仕組みについて、分かり易く解説している当方なぞは、余計なことをする苦々しい存在と映っていることでしょう。当方が眼中に有ればのお話ですが。
まあ、どの階級の親でも、子供のためを思って助言し、幸せな方向へと導いてやろうとするものですが、愚かな親では愚かな助言しか出来ないということですかね。
あなたのことを親身になって考えてくれる、本当の見方は一体誰なのでしょうかね?
あなたの親以外に、あなたのことを思ってここまで言ってくれる人、どこかに存在しますか?
この世の中の一体誰が、愚かな助言ではなく、賢い助言をあなたにしてくれると言うのですか?
いや失礼、当方が賢い助言をしてくれる親代わりだということを、身の程をわきまえずに、勘違いして言いたいだけでした。
でもここは、是非今までの人生を振り返ってみて頂きたい。友達や先生が賢い助言をしてくれたかどうかを?
さて、このように、世の中の仕組みを知らしめることは、鼻持ちならない行為である一方で、そんなことをしても無理、凡人に理解できる訳がないと、特権階級の人間達には、安心しきって高を括(くく)ってる節も見受けられます。
どんなに鋭く世の中を切り刻んで見せたところで、それを受け止める凡人側が取り得る行動なんて、テレビでバラエティー番組を見て笑い転げることや、パチンコや競馬などのギャンブルに興じ、ボーっと突っ立ったままで、言われるがまま、されるがままの人生を送ることぐらい。
そんなことぐらいしかないのです。
凡人は、決して世の中の仕組みを理解しようとしないし、自分の置かれた不公平な境遇にも気付きません。
こんなに侮辱的なことを言われれば悔しいでしょうし、こんなに人をバカにするようなことは言いたくないんだけれど、でも、今こうして読んでいる我々がこの後すぐに、見事に凡人ぶりを証明してみせるのですから仕方ありません。
世の中の仕組みを知ったところで、「所詮私は凡人、何も努力は致しません、決して頭は使いません」と、結果は世の中の仕組みを知る前と、何ら変わらないのです。
親や先生や上司の言うことだけを、大人しく聞き、そのとおりやり続ける愛すべき凡人のままなのです。
知らなくても知ってても何の行動も起こさない、この間抜けな程の従順ぶり、たまには気付いた時に褒めてあげて下さいね。
2005年7月21日、突然に、中国の通貨が2%切り上がりました。
当然何の用意もしていない凡人は、何の利益も享受しませんでした。
その代り、近い将来、突然やって来るであろう日本の破綻や、金利の急上昇、円の大暴落、預金の封鎖などがもたらす不利益については、たぶん見事に一身に、引き受けてしまうのでしょう。
そう、私は愚かな凡人ですもの、何でもお引き受けいたします。
このトラップ(罠)から抜け出すには2つの方法しかないでしょうね。
頭を使い努力して自分を高め、現状から一段上へと抜け出すか、社会からドロップアウトして、現実から逃避し陰惨な生活へと身を落とすか。
上に抜けるか、下に落ちるかの、どちらかなのです。惰眠を貪る凡人さん達。