2014-10-28

おかあさんに、ありがとうを言いたかった

毎日、おかあさんのことを思い出す。

恥ずかしくて、まともに話したことがなかったおかあさん。

割烹着をきて、恩を着せる仕草は微塵もなく、黙々と朝早くから台所にいたな。

夜は、俺より先には寝ない。

大きく包んでくれてた、おかあさん。あたりまえに、甘えていた。

遅かった。ありがとうを言えなかった。

今度、帰ってから、酔っ払った拍子に、いろいろありがとうね、と言おうと思ってた。

帰る時には、いつも、そう思ってた。

でも、言えなかった。恥ずかしかった。

結局、おかあさんには、ありがとうは言えなかった。

冷たくなったおかあさんの頬に、頬を押し付けて、おかあさん、ありがとうね、と言った。

何回も言った。もしかしたら、おかあさんが、目を覚ますかもしれないと本気で思った。

俺のこと、どう思っていたか、聞きたかったな。

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