事前購入型クーポンと呼ばれる商売があらわれてきている。これは、金券を、一定の時間内に限って販売するという手法が基本であるが、ここに、宣伝効果を極大化するために、予定数が完売するだけの注文が来たら金券を発行するという条件をつけたのが、インターネット時代の特徴である。
これにより、購入希望者は予定数を完売させなければ購入できないという利害関係の共有が発生し、ブログやツイッター等でその商品を宣伝するようになる。ドロップシッピングの変形とも言えるが、ドロップシッピングでは、実際にその商品を購入した人が、別の人にその商品を勧めるのに対し、フラッシュマーケティングでは、そのサービスを購入する段階で、中身を誰も知らないのに勧めるという事になる。
この手の会員権商売は、会員になると割り引きサービスを受けられる、入会金が必要だけど、いくつかのサービスを使えば元が取れるし、それ以上に使えば確実に得だからと、田舎から出てきたばかりの学生に使えないクーポンの束を売りつける商売が原型である。
この商売は、会員になって友達を勧誘すると、その友達(子会員)が支払った入会金の一部が貰える、子会員がさらにその友達等を勧誘してくると、孫会員となって孫会員が支払った入会金の一部が貰えるというネズミ講の要素を付け加え大きく広がった。金券・クーポン券を使って楽しむ事は目的ではなくなる、それらのチケットはほとんど使えない物ばかりとなっていても問題が無い。重要なのは、会員を勧誘して入会金を集める事であり、会員に勧誘することでその友人にも金儲けのチャンスを分かち合えるという善意の押し売りが成立している事なのである。会員が増えれば増えるほど、入会金からの取り分は膨らんで行くというネズミ講のメリットと言える部分を享受できた時期があった。勿論、ネズミ講なので早々に行き詰まり、今では誰もそんな会員権に見向きもしない。
これらのネズミ講は、国民健康保険や年金等の、国営で強制参加のネズミ講に比べれば、自由参加な分だけマシと言えなくも無い。
しかし、この会員権商売をインターネット上に持ち込むと、多くの人が中身の保証も無いのにお買い得だからと喰い付く。
クーポン券を出す店の側にしてみれば、宣伝費として広告を打つ分を、製品やサービスを購入してくれる客に直接還元するという事になる。インターネット上での好意的な評判を形成できるのであれば、それなりに価値があるとなる。しかし、好意的な評判を形成してくれる、発言力や影響力のある人が、購入してコメントしてくれるとは限らないし、そういう安売り品ばかりを狙うハイエナのような消費者に狙われるばかりとなるという事も、十分にありえる。
宣伝には効果があるが、その効果は、毒にも薬にもなりえる。地道な努力で客を掴むよりも、宣伝で客を集めた方が楽となると、商品やサービスが荒れてしまって、宣伝で集まる客しか来ないという状態になる。そうなると、客を引き寄せられる値段から宣伝経費を差し引いた金額で、商品やサービスを賄わなければならなくなる。行き着く先は、採算割れか、客を騙す詐欺商売である。
フラッシュマーケティングサイトや飲食店情報サイトの営業マンの言う事は、嘘ではないが、真実を全て述べているとは限らない。不都合な事は訊かれない限り黙っているモノである。インターネット上で自分の事業をアピールしたいならば、それらのサイトに依存するのではなく、自分の事業会社のドメインで自社のwebサイトを持つべきである。