2010-11-20

学術的には常識だが、政治的にアウトな言葉

仙谷官房長官の「自衛隊は暴力装置」という言葉が不適切だとして、撤回謝罪することになった。

このことに対して、マックス・ウェーバーを持ち出して「政治学的には常識だから全く問題なんて無い!」と吠える人々がたくさんいる。

ういう人たちを見てると「政治分かってないなー」と思わされる。

政治では正論が通るとは限らない。むしろ通らないほうが多い。

学術的にはOKでも、政治的にアウトな言葉はよくある。

多くの人の記憶に新しいであろう「後期高齢者」もそれだ。

前期高齢者後期高齢者という言葉医療保険分野などでは長く使われていた学術用語だった。

後期高齢者医療制度という名称に非難が殺到したとき、厚労省役人医療保険改革に携わった人たちは一瞬意味が分からなかっただろう。

「えっそこ?」。制度の中身ではなく、常識として使っていた用語に噛み付かれるとは思いもしなかっただろう。

そして、非難されている中で「学術的には常識なので問題ありません」と当時の福田総理が言ったらどうなったであろうか。

火に油を注ぐも同然である。

そのことを分かっている福田総理は興奮した人々に正論を説くという無駄なことを避け、長寿医療制度名称を変更した。

仙谷官房長官は発言の直後に謝罪し訂正した。

妥当な判断だったと思う。

領土問題での不手際事務次官通達民主党議員自衛官への恫喝疑惑など安全保障自衛隊に関する民主党への風当たりは強い。

そのような政治状況下での「暴力装置」発言だった。

仙谷官房長官に「暴力装置政治学上の常識なんだから撤回なんかする必要ない!」なんて言ってる人たちは

福田総理に「後期高齢者は問題ないから突っ張れ!」と言っているのと同じなのだ。

どれほど自殺行為か。

後期高齢者は延焼して大騒ぎになったが、

暴力装置は仙谷官房長官が「暴力」のもつ否定的なイメージをすぐさま認識し、「実力」と訂正し謝罪したために騒ぎは収束しそうだ。

詭弁、強弁、開き直りを多用してきた官房長官も学んだということだろう。

そして、マックス・ウェーバー引用して「学術的には常識」云々と叫んでいるはてな民も

所詮それは『学術的常識」であり、感情渦巻く政治では通用しないということを学ぶべきだろう。

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