日本は「質」の低い基礎科学研究論文を「量」産する国でしかないのか:ISIトムソン・ロイターズのデータが示すもの(追記2件あり)
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よって僕個人の私見であることをお断りした上で書きますが、これはやはり日本の研究は「量」はあっても「質」が低いということを如実に示す統計だろうと思います。それは、総論文数で2位、総被引用数で4位と「量」の面では非常に好成績であるにもかかわらず、「質」を表す総被引用数/総論文数比率で見ると35位にまで落ちる点から見ても明らかです。先日のエントリで明らかになった傾向と合致する結果であるようにも見受けられます。
それは、若手がすぐ結果の出る底の浅いテーマにばかり取り組んでいるから?かもしれませんし、そういう風潮を招いているポスドク問題を初めとした日本のアカデミアが抱える諸問題が原因なのかもしれません。
一方で、これまで遥か遠く後ろにいたはずのアジアの「科学途上国」たちが、すぐ背後に迫りつつあることもこの統計からわかります。総被引用数数/総論文数比率ではいずれも下位に沈んでいる国々ばかりですが、例えば中国は総論文数でいえば5位、総被引用数では8位と上位に食い込んできています。今現在のアメリカの基礎科学研究を支えているのが中国人留学生・ポスドクたちであることを考えれば、いずれアメリカのノウハウが中国に浸透するのも時間の問題でしょう。そうなれば、112位に甘んじている総被引用数/総論文数比率も今後は飛躍的に伸びてくるに違いありません。同様に、韓国も総論文数13位&総被引用数15位と伸びてきていますので、早晩日本に追いついてくる可能性は高いと思われます。
にもかかわらず、このような状況の中にあっても日本は内側に引きこもるばかり。先進23ヵ国でも既に後ろから数えて5本の指に入るような「質」の低い研究しか出ない有様だというのに、未だに日本を基礎科学という点でどのような国にしたいのかという政府のビジョンが全く見えてこないというのは、一体どういう了見なんでしょうか?
純粋な統計だけで見ても、既に「日本は科学先進国だ」という思い込みはもはやただの幻想に過ぎないということがわかるわけです。