2010-01-13

運命だった

今日仕事帰りに「(500)日のサマー」っていう映画を見てきた。渋谷なんて今じゃめったに行かないし、場内はカップルだらけだし、最初は来るとこ間違えたなと思ったけど、映画が終わる頃にはガン泣きで、これはおれの映画だって思っていた。他にもそう思ったやつがいたら、そいつとはいい酒が飲めそうだ。

あ、最初に書いておくけど、これは映画感想じゃないよ。

以下おれの話。

当時、おれはある居酒屋バイトをしていて、バイト代のほとんどを近所のレコ屋に費やしていた。

ある日、そのレコ屋に新しいバイト女の子が入ったって話を聞いて、休憩時間制服のまま、見に行ったことがあった。第一印象は「地味」だったけど、黒髪がつやつやしてんのと、表情が明るいのはちょっといいなとおもった。

でもそれだけ。おれはカウンターを通り過ぎ、いつも通り新入荷とエサ箱だけチェックして店を出た。

それから数ヶ月過ぎた頃、朝まで飲んだ帰りで、めずらしく午前中にそのレコ屋に行ったときのことだ。

店内には彼女だけがいて、かかっていたのは、あんまり有名じゃないかもしれないが、当時おれが一番好きなバンドだった。

気になってちらちらとカウンターを見ていると、彼女は店内に客が少ないのをいいことに、レコードプレイヤーCDプレイヤーを使って次々と好きな曲をかけているようだった。信じられないことに、そのどれもがおれが好きな曲で、正直おれのためにかけてるんじゃねーかと思うくらいだった。

それがきっかけで、おれは彼女意識するようになった。彼女カウンターにいるときを狙って、彼女の好きそうなレコードばかり買った。一度、今かかってるのは何か、とたずねてみたこともあるが(もちろん知っていてきいた)、対応はそっけなくてひどく落ち込んだ。

彼女とはじめて話をしたのは、彼女と同じレコ屋に友だちがいるバイト仲間がセッティングしてくれた飲み会でのことだ(合コンではない)。

シフトあがりで少し遅れて飲み屋に行くと、すでに飲んでいたらしい彼女は笑って手を振り、「ずっと話してみたいと思ってたんです」と言った。きいてみると、あの朝にかけてた曲も、おれが好きそうなの選んでかけてくれていたらしい。その日どうやって口説くかばっかり考えてたおれは、こりゃ運命じゃなきゃ嘘だろと思った。

そこから先はとんとん拍子だ。おれたちは連絡先を交換し、休みの日に映画を見に行った。その帰りに、俺は彼女に付き合ってくださいと言った。彼女は、付き合うとかよくわからないと言ったが、おれのこと嫌いですかときくと、そんなことはないと言った。「じゃあいいじゃん」といって、おれたちは恋人同士になった。

彼女といると話題は尽きなかった。彼女は良く笑ったし、笑うのを見るたびにおれは安心した。デートにはいつも、彼女に貸すものを持っていき、それを返してもらう口実でまた次の約束をした。

しかし彼女大学生で、おれはフリーターだった。そのうち、学校で何してんのかなと考えるだけで不安になった。いちど、彼女大学に遊びにいったことがあるが、大学に通ったことのないおれには異世界に思えて、具合が悪くなった。

だんだんと、おれは彼女をうたがうようになった。学校が忙しいというのは嘘だと思った。不機嫌そうな顔をしていると、彼女は必ず心配してくれるので、おれはそれを繰り返すようになった。彼女はあまり笑わなくなってしまったが、自分でもどうしていいのかわからなかった。

なんでいつも機嫌が悪いのか、と彼女がきいたとき、おれは何も言えなかった。いつまでもだまっていると、彼女は泣きながら「もう無理」と言った。おれのこと好きですかときくと、彼女はだまって首を振った。

付き合った期間は半年キスはしたけど手はつないでない。最後の方にいちどだけ、無理やりつないでみたけど、手に全然力が入ってなくて悲しかった。セックスは2回だけ。お互い実家だったしな。

まあそんな具合で、彼女とおれは別れた。

そしておれはなぜか怒っていた。最初から彼女はおれのこと好きじゃなかったんだなと思い、ムカついて仕方なかった。見返してやりたくて、すぐに別な女とつきあったが、そうこうしているうちに彼女はレコ屋を辞めてしまい、会うこともなくなった。

いざ会えないとわかると、おれはすげー落ち込んだ。お約束すぎて笑えるが、酒とパチンコにハマったりもした。

当時の彼女は、そんなおれの愚痴を嫌な顔ひとつせずにきいてくれ、おれは感動のあまり「おまえと親友になりたい」と言い、うまれてはじめてビンタされた。それが4年位前。

で、「(500)日のサマー」の話だけどさ、ダラダラと書いたおれの思い出話とは、音楽がきっかけってくらいしか似てない。

ただひとつでかいのは、ラストシーンサマーをみて、ああ彼女幸せに暮らしてるといいなって、たぶん初めて思えたことだ。

おれは彼女が好きだった。でもうまくやれなかった。それが運命だったってやっとわかった。

こんなこと書いてるの、嫁にばれたら恥ずかしいので、はじめて増田に書いた。読んでくれた人ありがとう。

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