俺らってさ、いろいろと物事を知りすぎちゃってると思うのよ。
自分以外の人のこととか、将来のこととか。
昔の人ってさ、ほぼ何も知らないわけだよ。
たとえば、平均寿命のことを考えてもいい。
身の回りの人がだいたいこんくらいで死んだってのはまぁ知ってても
日本全体の平均なんていう厳密な数値なんて知りようがない。
でも、俺らは知っちゃってる。
男は70後半、女は80過ぎ。多分ほぼ全員知ってる。
「宵越しの金は持たねぇ」なんて生き方をした人がどうなったのかも知ってる。
昔の人は日本全体がどうとか知らない。
とりあえず周りの人とどうにか頑張っていかなきゃなぁ、ぐらい。
労働人口はすでに十数年後まで決まってるからシミュレーションじゃなくて確定事項。
発展途上国がものすごいハングリーなのも、圧倒的な人口を抱えてるのも知ってる。
周りの平均年収も、平均結婚年齢も、離婚率も、平均経験人数も手軽にネットで調べればわかる。
だいたいこんぐらいってのが見えちゃってる。
もちろん、そういうデータやら科学の発展とかで恩恵は受けてるよ。見通しもつくし。
でも、知らないからいいってのがあると思うのよ。
知らないからやっていられるっていう部分があると思うのよ。
知らなかったら違う選択をしていたり、違う感情を抱いていたりすると思うのよ。
でも、もうそこには戻れない。この「こんなもん」感を抱えて生きて行かなくちゃいけない。
この「こんなもん」感を消し去るような「これだ」感がないとだめなのよ。「This is it!」っていえるような。
でも、それって長く続くもんでもないし。
もしくは「こんなもん」感を「こんなもんだよねぇ」って言いながらゆるく暮らしていくか。