気づいてみればもう1年だ。
残念ながらこれといって大きな変化はなく、目まぐるしく過ぎた1年とも言い難い。
現在も、私と件のバカ男子は同居していない。式は行わず、互いの両親にも1度挨拶しに行っただけである。
私は前と同じ職場で仕事を続けており、便宜上家計や姓も別々のままだ。バカも同様。
「紙の上だけの結婚」と思われて当然の生活だが、どうやら強制婚では珍しくない形態のようだ。
私もバカも、それまでの生活を変えることを望まなかった。
それに内心、「強制結婚による夫婦」が些か情けないとされる風潮を気にしていた。
メディアがいくら幸福的に報道しても、それだけが現実じゃないと皆わかっている。
例の婚姻届の色にちなんで「ああ、あの人たちアカ夫婦なんだ」、なんて揶揄されることもある。
アカなんていろいろ誤解されそうなので正直勘弁して欲しい。
最初の電話で、バカの第一声は「あー・・・・どうしようね。」だった。なんとも歯切れの悪い応対である。
久しぶり元気だった?俺も電話しようと思ってたんだ、ぐらい言えないのかお前は。
だが私たちの強制結婚について関知していることだけはわかった。
その時は簡単な近況報告の他に重要事項のみ確認し、電話を切った。
特に結婚の取消はしないこと、現在バカにも交際相手はいないこと、
そして今までに「じゃあ結婚すれば?」とはっきり言われた記憶はないということ。
住んでいる場所もだいぶ離れているし、出張等でこちらに来たこともないそうだ。ますます訳がわからない。
また現在ヤツは電気関係の技術職に就いているらしく、本人が直接国策に結びつくことはまずないだろう。
だとするとキーワード「じゃあ結婚すれば?」は単なる偶然だったのだろうか?
結局最初の電話で最大の疑問を解明することはできなかった。
電話での一件もありバカにはさして期待していなかったのだが、
唯一、普通の結婚みたいにプロポーズをしてくれたことが私の中ではとても大きな収穫だった。
強制結婚は本人同士の明確な意思が介在しないため、普通の結婚とは別の不安がもたらされるとこの時知った。
考えてみればまだ1年しか経っていない。将来的に私が仕事を辞めてバカと同居する可能性はある。
とりあえず結婚の事実で両親を安心させることはできたと思うし(強制婚は相手の安全性だけは折り紙つきなのだ)、
私自身も心に余裕ができたことで、以前よりも意欲的に仕事に取り組めている気がする。
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割と肯定的なコメントを残しててウケたw
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