あれから1週間が経過した。いまだに「夫」から私への連絡は無いままだ。
私はだんだん痺れを切らしてきた。宙ぶらりんな状態のまま待ち続けるのは性に合わない。
さっさとバカ夫(昇格)に電話して、この結婚に同意するかだけでも問いただしたい衝動に駆られる。
(当人の意思に関わらず成婚はするわけだが)
正直私自身は結婚などどうだっていい。それどころか別に結婚しても構わないくらいに捉えている。
どうせ私のことだ、最近よく耳にする「婚活」とやらにもガツガツできないのだろう。
私に交際相手はいないが、出会いさえあれば普通の結婚をしたいと以前から思っていた。
女の安月給、人並みに将来だって心配だ。一人で老後を生き抜くだけのキャリアも精神力もない。
ならここまでお膳立てされて、極端に拒否する理由の無い男と番いになるのも悪くなかろう。
その他大勢と同様、決まったものは仕方ないから若干癪だが従うか、といった感覚だ。
純粋な告白なら抵抗もあるが、私の意思が介在しない理不尽な制度だから電話だってできる。
いっそ疑問はすべて聞いてしまえばいい。さっさと結論を出してしまおう。
バカ男子に強制結婚の知識がどれほどあるかも確認しておきたい。
どこかでキーワードを言われた心当たりはあるのか?誰に、いつ言われたのか?
交際相手あるいはそうなりたい相手はいるのか?
ふたりの結婚以外にも聞きたいことはある。
最大の謎、あんたのかつての口癖「じゃあ結婚すれば?」と強制結婚制度に関連はあるのか?と。
恐ろしいことに、もうバカと結婚した気になりつつある自分がいる。
私のように消極的で自ら機会を切り開けない者にとって、この制度は希望ではないかとさえ思えてきた。
普遍的な夫婦の暮らしとはいかなくとも、支え合える相手を与えられるのなら。
いずれ年月がそれなりの感情だって芽生えさせることも、と期待せずにはいられない。
赤い婚姻届と同封されてあったバカへの連絡先を改めて確認する。
捺印のあった私たちが育った町ではなく、あまり聞き覚えのない都市が記載されていた。
小学生の時、クラスにいたバカな男子の口癖が「じゃあ結婚すれば?」だった。 とにかくどんな時でも、ふざけて会話の脈絡なくそう返してきた。 そんなことを十数年ぶりに思い出し、...
同じ話を聞いていた自分も、まさかそんなことがあるはずは、と思っていた。 最近はマスコミも信じられないし、まあ都市伝説の類かなと。昨日までは。 心当たりなどほとんどない。...
あれから1日。目覚めは良くも悪くもない。 いつも一番早く出勤する同僚によれば、彼女が来たときには既に私の机に置いてあったという。 彼女は当然のように「強制結婚制度」のこ...
割と肯定的なコメントを残しててウケたw
気づいてみればもう1年だ。 残念ながらこれといって大きな変化はなく、目まぐるしく過ぎた1年とも言い難い。 現在も、私と件のバカ男子は同居していない。式は行わず、互いの両親...
私たちの人生が変えられた日から、もうすぐ30年もの月日が経とうとしている。 私とバカ男子は入籍して5年ほど、それぞれ別々の生活を送り、独り身のような身軽さを楽しんだ。 その...