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有名絵描きが長けているのは鍛錬の果てにあるスキルと、リサーチする努力と召使の精神だ。才能ではない。

言葉の解釈の問題だと思う。「神からの贈り物（ギフト）」という意味での「才能」など神話に過ぎない。それはオレもよく分かる。だからオレもそんな意味で「才能」という言葉を使ってるんじゃない。オレが言う「才能」とは、「好きなモノを好きで居続ける能力」という程度の意味だ。

オレには好きなことがある。それで飯を食ってる。その分野では、ヒトサマよりいくらか長じてる自信もある。で、それを「才能があって良いですね」と言われたらもちろんオレもカチンと来る。簡単に才能のヒトコトで片づけるなよ、と。あんたらが酒呑んでるときも遊びに行ってるときもオレは努力してるんだよ、あんたらが昨日行った風俗の話題で盛り上がってるとき、オレは飯を食いながらずっと午後からの仕事のことを考えてるんだよ。休みをつぶして研修に行ったりユーザーの話を聞いて改善に努めたりしてんだよ、と。でも「じゃあ必死に努力して今の地位を保ってるんですね、勤勉な性格なんですね」と言われたら、それもちょっと違う。

そらやっぱり好きだからだよ。おもしれーからだよ。好きじゃなかったらここまでやらねーっつーの。

たとえばオレには実は全然駄目なジャンルもある。やってる仕事の隣接分野で、身につけたい・身につけられたら楽しいだろう・身につけたら自分の仕事の内容も変わるかも……というジャンル。そっちに手を出しかけてみたことはあるが、残念ながらさっっっっっっっっっっっっっっぱり身に付かない。というよりまずやる気にならない。そこからみると、どう考えてもオレは勤勉な人間でもやる気に満ちあふれた人間でも向上心のある人間でもない。単なる醜いナマケモノだ。

そーゆーのを見るとき、オレはそれを『才能』という言葉で語ろうと思う。

オレはオレの好きなモノを好きで居続けるために努力し、それに成功している。これはａルートを歩むオレの『才能』だ。そしてオレは、オレの苦手なものを好きになるための努力もしないし、仮に努力しても成功しない。その面ではオレは『才能がない』。オレは「努力しようとしても努力できない絶望」という意味でのｂルートが存在しないとは思えない。

ちなみにオレはかつて絵を志したことがある。オレは絵を描くのが好きだった。今でも素人を驚かす程度には描けるけど、それで飯を食おうとするのはやめた。絵に投入する時間とモチベーションを食ってく方面（ａルート）に投入する必要が出来たからだ。結果として絵に関しては、オレは先に挙げたｃルートを歩むことになる。オレは絵の『才能を捨てた』。

つまり、先に挙げたａｂｃというのは、実はそのまんま自分の体験の話でもあったわけなんだよ。

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