そんなことを呟きながら僕は今日も一人、夜の大学からの帰り道を歩いていた。もちろん本気で死ぬつもりなんかさらさらなかった。大学生活は、楽しいことは何もないけど、だからといってつらいこともないし、本当はそんな日常に満足していて、でもそんな自分を「天才少年」と呼ばれた僕は認めたくなかったから、「死にたい死にたい」言って、平凡な僕を自己嫌悪している振りをしたいだけ……
そんなことを考えながら歩き続けていたら、突然、後ろから
「じゃあ、あなたの望み、叶えてあげるね?」
という声がした。振り向いてみると、そこには白いワンピースを着た、中学二年生ぐらいの女の子が、美しい笑顔を浮かべながら、裸足で立っていた。
そして、振り向いた瞬間、僕は、その女の子が頭に振り下ろしてきたトンカチにより殴られ、倒れ込んだ。
倒れ込んだ後もかろうじて意識はあったが、体はもはや動かなかった。そこでさらに少女は遠心力を最大限に活用できる殴り方で何度も何度も頭を殴り、そして僕は、自分の頭蓋骨がめりめり音を立てて陥没していくのを聞きながら、失神した。
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目が覚めたとき、僕は、うすぐらい部屋に横たわっていた。
起きようとする。しかし起きようとしたとたん、腕と足に激痛が走る。
腕と足、さらに胴は、針金で床に固定されていた。たぶん無理に起きようとすれば、それらの部位はあっという間にちぎれ、体はばらばらになるだろう。
そのとき、部屋のとびらが開き、少女が入ってきた。少女のワンピースは所々に赤黒い模様がもまるで花のように描かれていてた。それはたぶん、俺が殴れているときに飛び散った血だろう。
少女は、入ってきたとたん
「ウケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ」
と笑い、そして
「さー、儀式を始めるましょう♪これで私はカミサマになれる♪なんでもやりたい放題よ♪世界は私の思うがまま♪」
と歌いながら、くるくると回り出した。手には、プーさんのぬいぐるみがある。
少女は回りながら僕に近づいていき、そして僕の腹にいきなり乗っかり、その上で歌のリズムに合わせてスキップを始めた。
ドンッ、パタッ、ドンッ、パタッ、ドンッ、パタッ、ドンッ、パタッ、ドンッ、パタッ。
いったん腹に飛び乗ってはまた飛び降り、また飛び乗ってはまた飛び降り、そして飛び乗られる瞬間に僕は激痛を感じながら、「ぐおっ!」と叫んだ。僕は、文化系の人間だから、腹筋はまるでなかった。
そんなことが30分間続いた後、少女は、僕の横に座り込み、手に持ったプーさんのぬいぐるみと会話を始めた。
「さー、おさらいコーナーだよー。」
「わーい」
「私はどんなことをすればカミサマになれるのかなー?」
「自分のことを心の底から恨んでいる人間の、血をいーっぱい浴びればカミサマになれるんだよー。」
「そーだよねー。でも人から恨まれるってどうやればいいのかわからないよー。」
「簡単だよー。昔いじめっ子にされていたように、苦痛をいっぱい与えれば、人間はその苦痛を与えた相手を恨むんだよー」
「じゃあこいつはもう私のこと恨んでるのかなー」
「試してみよーかー。」
そういうと少女はポッケから小斧を取り出し、右腕の付け根に
「ドン!」
と振り落とした。
血がまるでシャワーのように吹き出る。その吹き出た血を少女は浴びながら
「これでカミサマになれるのかなー」
と言っていた。
「ねー、私カミサマになれたかなー」
と話しかけた。
「なれたんじゃないかなー」
「じゃあ試してみよー。ていっ、くまちゃん、自分でうごけっ」
「うごけないよー?」
……少女はうつむきながら、「何でうごかないのよっ!」と涙声で叫んだ。そしておれの髪の毛を思いっきりつかんでひきちぎり、ポッケから取り出した塩を腕の傷口にぶちまけた。じゅわっ、ビリビリッ!その痛みにより、僕は再び気絶する。
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再び目覚める。少女は片隅に座っていた。
「あっ、起きた起きた♪」
そしてぬいぐるみにこう話しかけ始めた。
「あのねー、私昨日いっぱい考えたのー。何でカミサマになれなかったのかなーって。それで考えたんだけど、もしかしてこいつ、ずっと気を失ってたんじゃないかなぁ。なんか人間ってある程度痛みを感じると意識を失うっていうし。だからー、今日は私、考えてきたんだー。」
まぁ、ずっと起きてたけどね。
そしてそんな言葉を言い終わった後、少女はポッケから注射器を取り出した。そしてそれを、腹にぶすっと刺した。
「これはー、ある部分だけ痛みを感じなくさせるお薬なんだよー。だから、これを使えば、こいつのおなかに何したってこいつは起きたままなんだよー」
そう言いながら少女は、ナイフを腹に突き立て、十字に切り、そして十字から手を突っ込んで、僕の腸を引きずり出してきた。
ぐちゃっ、じゅるっ、べりべりべりべり。
そして少女は、その腸を自分の首に巻き付け、こういった。
「へっへー。ネックレスー。どー、怒った?怒った?」
腸をべりべりと引きずりだし、そしてそれをむりやりひきちぎった。
「でもこのネックレスくさーい。やっぱいらなーい」
そう言うと彼女はその腸を僕の口に押し込んできた。当然はき出そうとするが、強引に口の中に入れられ、そして口をガムテープで縛られる。
吐きだそうとするかが、もう胃も腸もないため血が逆流してくる。口の中が自分の腸と自分の血で一杯になる。鼻から血が吹き出る。そんな様子を見て、少女はゲラゲラ笑っている。「あははー、鼻血だしてるこいつー。」
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「おなかすいたなー」少女がつぶやく。
そして、残っている腕の手の指に、いきなり食らいつき、そして噛みちぎる。
手指、耳、乳首、かみつけそうなあらゆる場所に噛みつき、食いちぎられていく。
しかし、やはり人体は味がよくないみたいで、少女はぺっと吐き出し、そして
「あんた、なんとかしなさいよね。」と言いながら、それらを僕の口に押し込んでくる。
そして食べるが、それが食堂からふたたびぼろぼろ零れる。だって、僕にはもう、食道から先はないから。
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「あーなんでこんなにやってるのに、カミサマになれないのかなー」
塩の100倍ぐらいある劇薬を塗った針を火であぶって、僕の体に何万本も突き刺しながら彼女は呟く。
僕には答えが分かっていた。
だって、君が好きだから。
「そーだ。今度はうんこでも食べさせてみよう。」
いや、逆にそれ喜んじゃうから。