最近はしなくなったが、私はよく自分の持ち物を捨てる妄想をする。
自分が何らの持ち物を遺さず姿を消すイメージは、立つ鳥後を濁さずという感じで、心が慰められた。
で、列車に乗って知らない町へと出かけ、駅で財布を捨て、日本海側のどっかの海岸からイントゥザブルー。
しばらくのち、自分が行旅死亡人の欄に載る。
家族や友人がそんなもの見てるわけないけどね。
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もっとも、大学を卒業した後無職で家賃も滞納気味で奨学金も年金も健康保険もほったらかしの私が、きれいに飛び立つなんてことは端から無理な話だ。こんなのは寝る前の暇つぶしに過ぎない。
だからこそ、徹底的にやろう。理想的に妄想しよう。そうしよう。
まずは本を整理してブックオフに売り払う。
買い取ってくれなかった分は資源ゴミの日に紐で縛って出す。衣服も資源ゴミ。
PCはHDDを初期化して近所のパソコンショップに売ればいいだろう。
家具は、引き取ってもらえそうなものはリサイクル業者に。たぶんこたつテーブルとアルミラック、勉強机やカラーボックス、姿見あたりは売れるだろう。そうでないなら捨てる。
他は粗大ゴミ。
布団一式、カーペット、椅子、プリンタ、自転車、30000番台のPS2(ゲーム屋さんにも見捨てられた!)
電器製品は家電リサイクル法とかでややこしいが、まあ細かいことは捨て置く。トースターに電子レンジ、炊飯器、ガスコンロ、テレビ、掃除機……。
ばしばし捨てる。
モノが減っていく。
この1Kのアパートが、18歳の4月1日に足を踏み入れたときの状態に近づいていく。
いや、あの時は実家から持ち込んだものも少なからずあったから、それ以上だ。
わーいシンプルライフ。シンプルすぎて自殺しか選択肢がないよ!
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……とここまでは順調なのだが。
問題が残る。
(1)市の環境局に連絡
(2)粗大ゴミ処理券を購入
(3)指定日に指定の回収場所にゴミを出す
の流れになっている。つまりゴミは収集所まで自力で運ばねばならない。
知人に連絡して「自殺するから手伝って」と頼むのか?
いくらなんでも無茶だろう。
世の中にはこういうデカい物でも引き取りに来てくれる業者がいるのだろうか?
これはいそうだな。探してみるか。でも探し方が分からない。
いっそ個人でアルバイト募集してみるか?
「時給1万円! 冷蔵庫を運ぶだけのお仕事です!」。おいおい。
……とまあ、このへんの解決方法がいつも分からなくて、妄想は中断してしまう。
そこまで考えられるなら本書けるんじゃね? 俺は想像力すらも欠片もないからマジで死ぬしかなさそうだ。 対人恐怖症ってわけじゃねーんだが(今バイトで営業やってるし)、面接が非...
……冷蔵庫や洗濯機をどうやって一人で運べっていうんだ! 業者を頼むといいですよ。 冷蔵庫や洗濯機なら、あわせて1万円程度くらいで回収してもらえます。 自分は何もしなくてい...
ありがとう! なんかすっきりした!