2010-07-06

住んでいたのは、かなり田舎だ。夜は真っ暗になる。

外の明かりは、防犯のために、誰かが来るとわかっているとき以外は消す。

目印になってしまう。建物の多い都会とは逆だ。

ある夜、ひとりで留守番をしていた。家族はみんなでかけていた。

居間で本を読んでいた。

10時を少しまわったぐらい。電話が鳴って、すぐ切れた。

直後に裏口のドアが、どんどん、と叩かれた。

10時で夜中もないものだが、「こんな夜中に?」と思い、放っておくかどうか少し考えた。

以前、「昆布を買え」だったかなんだったか、小学生低学年ぐらいの子供が戸口に立っていたことがあった。

大人が一緒だったらしく、県道から家までの暗い小道に、隠れるようにして様子をうかがっているようだった。

家からのうすぼんやりしたあかりの中に、みじろぎする人影が見えた。

それ以上のことはなかったし、どう説明したらいいのかわからないが、変な気分になった。ちょっと頭に来たかもしれない。

そのときは、私の母親も一緒だった。

母は、昆布をいくらか買い、「どうにもならないのよ」というように肩をすくめた。それ以上話題になることはなかった。

自分でもどうしてそうしたのかわからないが、私はチェーンをかけたままドアを細めに開けた。

誰も居なかった。闇夜というのに、人影が見えた気がした。

ドアを閉めた途端、また電話が鳴った。

ワンコールの半分ぐらいで、切れた。

今から30年近く前のことである。

携帯電話など見たことが無い。

キロぐらい離れたところには、確か公衆電話があったはずーー。

直後にドアが、また叩かれた。遠慮がちなものではなく、確信しているような、どんどん、という叩き方。

頭にきた。

近くにあった、弟の竹刀を取りドアを全開にして外に飛び出した。

誰もいなかった。

自分のことを馬鹿みたいだと思いながら、一応、家のぐるりを見回ってから戻った。

あとで考えたら、「なんだか変だったかも(あぶなかったかも?)」と怖くなった。

思い出して、母にこのことを話したことがある。変な顔をして黙って聞いていた。

あんまり怖い話ではなくて申し訳ない。

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