後輩は、いろいろな才能を持っている。
まず、スポーツ万能だ。国体出場歴もある。筋肉の引き締まった、すごくいい身体をしている。
カラオケもべらぼうに上手い。聞いていて女子社員の半分が涙ぐむほど上手い。
男なのに料理が上手い。一度彼のマンションでホームパーティーをしたことがあるが、どこのフレンチレストランからケータリングしてきたんだ?ってぐらい本格的な料理が出てきた。
絵も上手い。何かの賞に入選したこともあるらしい。前述のホームパーティーの時に作品を見せてもらった。俺は絵のことはよく分からないが、上手いということは分かった。
本や映画にもやたら詳しい。話題作はほとんど見ているみたいだ。「あの本、タイトル何だっけ」って時は、彼に聞けば大抵分かる。
が、彼は仕事が出来ない。
運動も音楽も料理も絵も本も映画も、SEの仕事には全く関係ない。
頭が悪いわけではない。有名大学を出ている。単純に、自分の才能を生かせない仕事に興味が持てないのだろう。
タチが悪いのは、これらの才能があったが故に、学生時代はかなり周りからちやほやされていたということだ。
社会人になってからは、評価の基準が「仕事の実績」であり、他の才能があってもちやほやされない、ということは頭では分かっているみたいだ。でも、納得はしていない。いつもくすぶっている。
彼は、どんな職に就けば幸せだったのだろう。
元スポーツ選手とはいえ、それで食っていけるほどの成績ではなかったのだろう。
料理人になるのは、有名大卒という彼の学歴を考えると勿体ないような気がする。
天は二物を与えず、と言うが、二物を与えられてしまった人は不幸なのかもしれない。身体は一つしかないのだから。
彼は、どんな職に就けば幸せだったのだろう。 金融機関や商社の営業マン。 高学歴体育会系リア充には上流企業の営業職はもってこいだろ。
料理人になるのは、有名大卒という彼の学歴を考えると勿体ないような気がする。 かといって、料理人になれるくらいに腕がいいなら、料理以外の職につくのも勿体ない。 有名大卒な...
有名大卒なんて、世の中、結構いるもんだよ。 そのとおり。有名大卒を「特別な人々」と思っている連中の気が知れない。