彼と初めて会ったとき、私は
「世の中にはこれほど自分の理想にどストライクな外見の男性がいたのか」
と激しい衝撃を受けた。
世間一般でいうところのハンサムとは微妙に違うのだが、私の好みのど真ん中を剛速球で貫く顔。顔だけじゃなくて体型も声も、服のセンスも。
知り合ってみると、彼の性格も非常に好ましかった。気持ちがとても優しくて、さりげない心配りが出来て、礼儀正しく、誠実で聡明な人だった。
センスが良くて能力があって、いろんなことを率なく器用にこなせるのに、驚くほど謙虚で控えめ。
彼のことがわかればわかるほど、「世の中にはこんなに素晴らしく好ましい人がいるのだなあ」と私の驚きと好意は深まった。
彼女持ちであることは知っていたので、私は恋に落ちなかった。ただ、この人と付き合っている人はうらやましいなあ、とちょっとだけ思っていた。
その後、多少の月日が流れ、ばらばらに生活していた彼と私は、なんとなく再会した。
彼のかっこよさ、好ましさは変わらなかった。というよりもむしろ成長した分、より素敵な人になっていた。
私たちはたまたま二人とも恋人がいなかった。だからなのかなんなのか、私たちは何度か一緒に食事に行った。
私たちは以前よりも親しくなった。
私の心の中に多少の期待がなかったと言えば、嘘になる。
彼ほど私の理想に近い男性は、いなかった。おそらくこれからもこんな男性には会えないだろう、とも思った。
こういう男性と恋人同士になれたら、本当に素晴らしいよなあ、とはよく考えた。
しかし、依然として私のその思いは、夢想の域を出なかった。何度も一緒に出かけて、スカイプやメッセで毎晩のように話をして、どんどん親しくなったのに、私は自分が彼の恋人になれるかもしれないということを、あまりリアルにとらえることが出来ていなかったのだ。
ある晩、私は呆然と部屋の真ん中に座り込んでいた。
その日、仕事が終わった後の彼が、私の部屋に泊まりに来ることになったのである。ふと気がついたらそんなことになっていたのだ。
ふと気がついたらというのも、思えばあんまりな言い草である。そもそも彼が長距離通勤を苦にしていることを知った私が、「帰りが遅くてたいへんなときはうちを使っていいよ」と先に言ったんだから。
しかも別にそのときの私は、少女のように無邪気だったわけでもなんでもなく、ちゃんとそれなりの意図があって言ったんだから。
言われた後、彼は嬉しそうに笑ったんだから。そりゃ来るだろうよ。
めでたいじゃないか。喜べ自分。
なのに私は、喜べなかった。自分が喜んでいないことに気づいて、それがすごくショックだった。
そして私は、そのとき唐突に、自分が彼に恋していないことに気づいたのだ。
彼のことは本当に素晴らしい人だと思っていて、好ましく感じていて、これほど素晴らしい男性にはもう二度と会えないだろうなとまで確信しているのに、一緒にいるときはいつもちょっとときめいているというのに、でもなぜか私は彼に恋していない!
私は完全にパニックを起こしていた。一体なに言ってやがんだこの女、と自分のことを殴りつけたい気持ちでいっぱいだった。
その晩私は、ベッドを彼に譲って隣の部屋に客用布団を敷いて、自分はそこで寝た。
彼はちょっとびっくりしたような顔をしていたが、そりゃびっくりして当たり前なんだが、なにしろ控えめで優しい紳士であるので、そのまま一人でベッドに寝てくれた。
二人の間には何事も起こらなかった。もうどっちもそれなりにいい歳した大人だというのに。この話を知った友人は驚いてのけぞっていた。無理もない話だ。
更に驚くべきことに、そのような清らかな夜は、その後二度ほど繰り返された。
そしてそのまま私たちは恋に落ちず、終わった。
原因は主に私である。
彼は一度「一体ぼくのことどう思っていますか」的なことを聞いてきたんだが、私も自分が彼をどう思っているのか、まるでわからなかった。
その後、主に彼が出来た人格の持ち主であったがために、私たちはゆるやかに友人に戻った。
しかし、その間も私はずっとパニック状態だった。
私は何を考えているんだろう。彼の何が不満なんだろう。いやもう全然不満はない、ほんとにない。だったらなんで彼に恋しないんだろう。
彼と一緒に居ると、いつも楽しくて優しい気持ちになれるのに。ちょっとどきどきもするのに。だから私は自分が彼に恋をしていると思っていたのに。
でもなんだかそれは違うらしい、かといって何が違うのかわからない、これは一体、どういうことなの!? ああ申し訳ない、とにかく彼に申し訳ない。
そんな考えが延々と頭の中を回り続けた。
彼と私は、ふとしたことでまた行動を共にすることが多くなった。やはり未だに彼はかっこよく、優しく、私は彼といると楽しい。
期待する気持ちはさすがにない。自分は彼に対してそれなりに酷いことをしてしまったと思うし、未だに申し訳ないと思っている。
ただあの時頭の中を回り続けた疑問だけは、未だに残っている。彼の顔を見るたびに、その疑問が蘇って、不可解な気持ちになる。
どうして私は彼に恋しなかったのだろう。恋できなかったのだろう。私は自分自身の心が、本当に理解不能だ。
頼む、ほんとに誰か、私にその答えを教えてくれ。
その後、もしかしてこれが答えかもしれない、と思うものを見つけたような気がする。
ありがとうございました。
そういう関係なら恋人よりも人生のパートナーに向いてるんと思うんだ。
好きになった異性を長く泳がせておくと何所かで適当な相手を見つけてきてしまい、 あなたと疎遠になってしまうことがよくあるが、それでもよろしいか。 それでもよいというなら、そ...
http://anond.hatelabo.jp/20090808215805 なんせ「落ちる」ものだ。落ちなかった理由を探しても無意味だ。 それでも、あえて探してみると、たぶん、彼が完璧に好み過ぎたんだろう。彼は人間じゃ...
元増田です。トラバとブコメがついてたいへんに嬉しい。 ありがとう。増田に書いてみてよかった。 そういう関係なら恋人よりも人生のパートナーに向いてるんと思うんだ。 考えた...
この人の近くにいたいとか、そういう感覚は当てにしたほうがいいと思うよ。 もしかして、自分が幸せになるのを怖がってない?
http://anond.hatelabo.jp/20090809082244
恋はタイミング。ときめきはすぐに無くなるもの。脳内ホルモンはそうそう便利に放出してくれない。自分がわからないというのは、いつだってある。ただ、それを現実と照らし合わせ...
あと、そうそう、笑いのツボが違ったんじゃないかなあ。笑いが共有できると幸せホルモンが出るらしいです。たしかに、笑いが共有できないと息が詰まるし、意外と人によって違うか...
私も上の増田に同意であなたと彼の関係は「恋人」ではなく「夫婦」として 「恋」ではなく「愛」として向いているんではないだろうかと思う また、ご自分でも言われているように 恋...
考えすぎて一周しちゃったのかな。私はそんな感じで付き合い始めてもうすぐ10年近い。 理想的な人で一緒にいると安心するけど今考えれば最初から恋じゃなかった気がする。 若かった...
人はそれをマリッジブルーと言う。
「世の中にはこれほど自分の理想にどストライクな外見の男性がいたのか」 「どストライクの男性」じゃなくて「どストライクな外見の男性」なところがおもしろい。 --- 知り合って...
俗にいう草食系男子というやつ?
正直信憑性のほどは怪しいのだが、 どこかで「女性は自分の父親と近い体臭を持つ人とは恋に落ちにくい」という研究結果を見たことがある。 いわゆる近親相姦に近い状態を避けるため...
事実は小説より奇なりとはよく言ったもので。 自分で自分がわからない件 http://anond.hatelabo.jp/20090808215805 彼女持ちであることは知っていたので、私は恋に落ちなかった。 ①『彼女...
個人的にナンパをよくするので、こういう話題は好きです。 一緒の部屋で寝て襲わない。というのは、正直、紳士ではなくチキンです。つまり、彼は紳士でありません。紳士であるなら...
対象外というよりは、襲えるほどに男らしい外見ではない。という部分に尽きると思う。 個人的にみて、この男性の容姿は 中の下から中の上だと思う。これは元増田自身の容姿のレベ...
ああ、そうだよねぇ。 女の子の家に上げてもらえる、場合によっちゃ泊めてくれるかもとなったら、相手の意向確認も兼ねてスキンシップを試みるよ俺。 何かの拍子に軽く手を触れると...
ちょっと違うのかもしれませんが、同じような経験をしたことがあります。 わたしの場合、完璧な彼を壊してしまうような気がしてアクションが起こせませんでした。 元増田さんの彼と...
だから、男としての魅力がないだけだってww 押尾が迫ってくれば抱かれてるだろ? けど、そういう観念が女に特有なのかな・・。男は、そういう感情は絶対ないとおもうんだけど。 ...
昨日の飲み会で知り合いの女性が押尾学は大嫌いって言ってたが。
いざ目の前で、やさしく言葉かけられたら、すぐ落ちるよw
なんか2chとかで「女はDQNに惹かれるんだ」って書いてあったのを鵜呑みにしてる童貞みたいな台詞だな。
前世が敵同士
そのネタもらった!
オレならまずは寝てから相性がいいのかどうか考えるけどね。
「男性諸君みたまえ、紳士というものは女性に都合のいい男であります」 なんて地の文をつけたら近世文学そのまんま。 混じれ酢すると、初めて逢ったときの盛り上がりと再会のそ...
理屈で抑えすぎなのかもねー。 自分もそういうタイプだから、なんとなくそう思う。 突っ込んでいくことが恐怖なんだよね。 そうこうしてたら、あっという間に年月経っちゃうんだ。 ...
またきみか
同じ立場ならこの文章を相手に見せる。 悩んでも自分が何かよくわからないだろうし、それなら一番どうにかしてくれそうな人に相談。
少し状況が違うけれど女性友達で仲が良いけど恋人関係にはならない人がいる。 二人でいるとすごく楽しく、会話も盛り上がるけれどそれ以上の関係には発展しない。 僕もなぜかと理...
http://anond.hatelabo.jp/20090808215805 再び元増田です。 ブコメもトラバもこれほどたくさんつくとは、全く予想していなかった。かなり圧倒されている。 なるほどと思うコメントも、いやそれ...
怖いという感情は最も根本的で克服できないものだからな。 これを怖いまま無理やり乗り越えろなんていわないさ。 いい相手が見つかってよかったな。 そういえば近年、俺はモテやし...