もう何年か前の出来事。
その頃自分は定職についておらず、日雇いで倉庫のピッキングをしていた。
自分の経験したいくつかのバイトの中でも、もうしたくないバイトとして1、2を争うくらい。
大学生くらいのお兄ちゃんが携帯で、あたりを気にせずしゃべっていた。
もう携帯電話のマナーはそれなりに行き渡っていた頃で、周りの人もなんとなく見てる。
そんな中、彼に声をかけた酔っ払いの親父がいた。
酔っ払い親父VSチャラいお兄ちゃんの戦いは火蓋を切らず、
酔っ払いだけどGJ!!
よく言った、おっさん!!
車内は一気に二人を生温かく見守る雰囲気に。
親父は従順なお兄ちゃんが気に入ったらしく、彼が電話を切ったことを褒めたりして、
しばらく絡んでいた。
やがて親父は財布から五千円札を取り出して、お兄ちゃんに差し出した。
「ほれ、受けとんなよ。携帯電話切ったご褒美。俺ぁ今日競輪で勝って機嫌いいのよww」
え?ちょ、おっさんww
今さっきまで、おっさんこの小さな車内でヒーローだったのにww
その五千円イミフww
おっさんの株、大暴落ww
携帯切るのは当たり前で、ご褒美もらうようなことじゃないww
お兄ちゃんは当然断っていたのだが、いいからいいからと押し付けられて、
結局受け取っていた。
「ありがとうございます」って恥ずかしそうながら、すごい笑顔だった。
当時私の日給はたしか七千円あたりだったのだが、交通費等をさっぴくと、
実質六千円くらい。
私が一日かかって稼いだ金額のほぼ同額を、
車内マナーを守っていなかったお兄ちゃんが一瞬にして手に入れるこの理不尽。
車内マナー守らないから、誰か俺にも五千円くれ!!
思わず心の中で絶叫してしまったとしても、罰は当たらないと思う。
おっさんは機嫌がよくてお金をあげただけだろうから、誰も損した人はいない。
お兄ちゃんは通話相手と一緒に、
あぶく銭で酔っ払い親父を肴に、楽しく一杯飲んだのかもしれない。
私は釈然としないまま電車を降りた。
そこで「羨まし-!」と叫べない、素直さを無くしたあなたの負け。(なんに負けたのかは不明だ)
別におっさんの株は下がらんだろ。 上機嫌なおっさんと、あんまり荒れてない若者のちょっとしたいい話程度。 嫉妬乙。