2009-06-08

神は、いない

5年前のことだけど、実家ごろごろしていたとき、母の知り合いの女性が来訪してきた。その人は母とは10年以上前から知り合いで、結婚して二人目の子供ができたときに旦那を電車事故で失った女性で、それからその日まで6年間、二人の子供女性一人で育てていた。

その日、その人はかなり陰湿な空気をまとっていた。俺は挨拶だけしてさっさと出かけてしまった。俺がいていいような雰囲気ではなかったからだ。

適当時間をつぶしてから実家に戻ると、その女性はすでに帰った後だった。母に女性が何しに来たのか尋ねようとしたら、母から先に言ってきた。

「娘さん、亡くなったそうよ」

女の子が一人でお風呂に入っていて、大きな音がしたので女性が慌てて風呂場に駆け込むと、女の子が倒れていて、どうやらタイルに足を滑らせたらしかった。そのまま病院に運ばれて亡くなったようだった。

その女の子が3歳くらいの頃に何度か面倒を見たことがあったので、かなりショックだった。

先日、母から電話があり、その葬儀の時以来ぶりに、その女性が母のところにやってきたとのことだった。

そして母は重い声で、

「今度は息子さんが亡くなったそうよ」

と言ってきた。

妹を亡くした兄は、母に苦労をかけられないと、中学生ながらアルバイトをしていて、配達の途中で車に撥ねられた。

すでに葬儀は終わった後で、女性は一人だけになってしまった。

悲しすぎる、そう思った。

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