2007-03-14

いつものように口と膣を犯される。髪をつかまれ喉の奥まで銜えさせられる行為にも、前戯もなしに挿入されることにも、もう慣れた。男達は自身が満足するまで私を犯し続ける。私は他人事のように。違う世界の人の事ようにそれを見る。そして終わるまでただ待つ。からっぽの頭で。ただただ待つ。

気がつくと部屋には誰もいなかった。もう事が済んだようだ。噎せ返るような男の臭いが染み付いた部屋。拘束された手足はズレを起こして赤く腫れている。何日過ぎたのかはもうわからない。最初のうちは、彼らに対して怒りがあった。しかし、時が経つにつれ、怒りは恨みに。恨みは辛みに。そして辛みも次第に摩耗して、何の感情も抱かなくなっていた。その時からだろう。もちろん、彼らが使った薬のせいもあるのだろうけど、その時を境に決定的に、思考が散漫とし、物事を考えることが困難になった。今考えられるのは一つだけ。家族のことや、脱出方法、復讐といったことではなく、彼らが初めて私を陵辱した日に言った言葉。「嫌だなんて嘘を吐くなよ。ほら、こんなに感じてるじゃないか。」

喉の奥に異物を挿入されて起きた。また夜が来たらしい。いや、確かに最初のうちは夜にしか来なかったけど、今は昼に陵辱するようになったかもしれないから、夜かどうかはわからない。窓がない薄暗い電球が点いてるだけだから私には時間がわからない。股間に何かひやりとしたものが塗られる。あの薬だ。最初の日から犯される度に塗られていたあの薬。早くも愛液を滴らせた私を見て男は満足そうに笑う。下卑な笑いだ。言いたいことはわかる。何度も聞かされたし、下衆な顔が雄弁に語っている。「こんなに濡らしてイヤらしい女だ。」

初めての時は、何か釈然としないものを感じてはいたが、なにぶん錯乱状態だったので、何も言えずに、濡らすことに、感じてしまうことに恥ずかしさを感じ、半ば認めてしまっていたようなものだったが、何度も陵辱されるうちに何か釈然としないものは大きくなり、そして言葉になりつつあった。

「濡れているのは、感じているのは私の体であって、私ではない。」

だって、そうではないか。薬を使われて濡れるのは私の意思だろうか。頭痛薬を飲んで頭痛が治ったからといって私の意思で治したとは言えないように、それは私の体が反応しているだけであって、私が濡れているわけではない。また、嬉しいと思うのが厳密に言えば私ではないように(私が嬉しいと思おうしたからといって嬉しくない状況が嬉しいとは思えないように)、感じたり欲しがったりしているのは私ではない。だから、私がいくら濡れていようと、感じていようと、それは私の体が反応しているだけのことであって、本当の私はあなたたちを最低で最悪な人間だと思っています。あなた達は私を犯して優位に立っているつもりかもしれませんが、それも私の体のことであって、本当の私は何ら犯されていません。

男達の責めが終わり、帰ろうとするときに、今までずっと考え、ようやく言葉になった、釈然としなかったものを、口にした。男は初め、何十日も犯し続け人形のようになっていた私が言葉を喋る、それも男達に対する批判を口にするという状況が理解できなかったようで、呆としていたけれど、言葉意味を理解すると顔を真っ赤にして怒り、反論も思いつかないらしく、男の手から血が出るくらいまでに、私の顔の骨が折れてしまうくらいまでに、ひたすら私を殴り続けた。ただ、ひたすらに。

体が送る痛みという信号を感じながら、私は自説の穴について考えていた。身体性の放棄どころか、喜怒哀楽の感受さえも放棄した私の考えは、裏を返せば、私というものがとても小さく、稀少になるということを意味する。だって、嬉しく思うのも、悲しく思うのも、楽しく思うのも、辛く思うのも、それは全て私ではなく、私じゃないものが思っているってことなんだから。そこに私はいない。私が感じていた感情や、私がしたと思ってたことは、私のものじゃないってことなんだから。私がいるのは、それらを実現するための折衝や調整に少し顔を出すときだけ。それ以外には私はいない。ただ、私の体という乗り物から見ているだけの存在

でも、もし男がそこをついてきても心配はなかった。それでも私は男を最低だと判断したから。自分がそんな小さな存在になってしまうとしても、今まで私だって思ってたものが私じゃなかったとしても。それだけは譲れなかった。

男が何か光るものを持ってきた。それが振り下ろされると目の前が赤く染まる。体が冷える。男の罵声が聞こえる。でも、とても愉快だった。とてもとても愉快だった。だって、こんなにしているのに、たとえどんなにしたところで、男は私を犯せない。汚せない。誰も私を犯せない。私を汚せないんだから。

  • もっと良く考えればわかる事なのに、なんでそうなるかな。順を追って説明するから、以下の文章をよく読んで考えて欲しい。ちょっと長いから時間のあるときに読んでね。僕は日本人じ...

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