2023-01-05

楡の唄

誰かが繫く訪っていた

楡の切り株

死んだわけではない

楡の切り株


その断面は瑞々しく

今にも雫の湧いてきそう

誰の通うこともない広場

根を張っている


訪う度に、その誰かは

まだ伐り倒される前の楡に、背中を預け

寝息を立てていた


今はその誰かはいない

微かな呼吸が聞こえることもない

楡の木も、その偉丈を晒すことな

かに呼吸をしているだけだ


楡、いない誰かの呼吸の音

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