誰かが繫く訪っていた
楡の切り株
死んだわけではない
その断面は瑞々しく
今にも雫の湧いてきそう
誰の通うこともない広場に
根を張っている
訪う度に、その誰かは
まだ伐り倒される前の楡に、背中を預け
寝息を立てていた
今はその誰かはいない
微かな呼吸が聞こえることもない
楡の木も、その偉丈を晒すことなく
静かに呼吸をしているだけだ
楡、いない誰かの呼吸の音
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