「鬼が来る」
そう言うと、我が子は消え入りそうな声で「嫌だ…」とつぶやき、今にも泣き出しそうな表情で私の言うことを聞くようになる。
私はそんな我が子を笑顔で称える。
心のスイッチが切り替わる寸前、私はいつも真剣に我が子の目を見て言う。
「言うことを聞かないと鬼が来るよ」
すると我が子は従う。
もう私も気づいている。
我が子は鬼に怯えているのではない。
私に怯えている。
私の心のスイッチが、鬼に切り替わるのを恐れているのだ。
我が子は知っている。
「鬼が来る」
いや、鬼は来ない。その代わり、私が鬼になる。
こんな子育ては間違っている。
力で押さえつけているに等しい。
嘘までついて我が子を押さえつけようとする私。
嘘を見透かしながらも私に怯える我が子。
私ではなく、架空の誰かが怒るんだというニュアンスも我ながら卑怯だ。
どうしたらいいだろう。
子どもは学習する。 全ての人間は鬼になる可能性がある・・・と。 親でさえそうなんだから、血の繋がらない他人なんてもっと怖い鬼になるかもしれない。 鬼の恐怖から逃れるのはど...
間違ってなくない? 本気でぶん殴ったりしない限りは