人間力、教育力といった数値化しない良く分らない力を掲げる会社だった。
秋に一度集められた時、数冊の本を指定され、春までに全て目を通すように言われた。
それと、12月から週5日で中途採用扱いの新人研修というものが行われることになった。
研修内容は新人一人に付き先輩一人が教育係として割り当てられ、
課題のデキを競わせるというものだった。
残業代はでない。毎朝1番に争って出社し、掃除にせいを出す毎日。
同期との関係もぎすぎすしたものだった。
でも学歴も経験も無い僕らはどんなに会社におもちゃにされても辞めない覚悟があった。
4月になると、僕は営業兼SEとしての仕事をこなす事になった。
職場の半分以上が派遣エンジニア、専門学校でたてのエンジニアばかりだった。
僕はSEが良く自殺する理由がなんとなく分り始めていた。
秋になったころ、
僕らの同期は半分になっていた。そして僕もこの業界を去る事を考え始めていた。
サービス残業が非常に多くなった事と、プライベートが上手くいかず、
何かを感じ取ったのか、一番仲のいい先輩が呑みに連れ出してくれた。
僕は会社に入って、行事としての飲み会以外で社員と呑むのは初めてだった。
とても嬉しかった。
先輩は高校をでてからソフトウェア会社に入って、その後転職を何度も繰り返していた。
不快な気持ちになったが、
先輩がどうやら僕を勇気付けてくれていることに何と無く気づき嬉しかった
実は僕は正社員ではなかった。入社式の直前に試用期間1年の契約社員であると言われていた。
試用期間1年をさらに1年延長する契約書。僕は疑問を感じながらも
会議室をでるとある先輩にすれ違いざま、肩を当てられた。
とっさのことだったので僕は転倒してしまった。
彼は何も言わずに舌打ちをするとそのまま客先に出かけていった。
あとで知った事だが、僕を呑みに連れて行った先輩と僕が辞めるかトトカルチョをしていたようだ。
僕が仕事で手に入れたものは何なのだろう。
会社自体、新人を中途採用扱いで採用し、試用期間1年間でもう一年は契約延長って突っ込みどころがあり過ぎる。 契約書よく読んだら正社員ではなく契約社員としての採用な感じするな...