2010-09-30

国勢調査に信憑性はない

明日が「国勢調査」の日で、今回は10年に1回の本格調査の年だ。

しかし、回答拒否によって、調査員による代筆が横行している調査結果に、どれだけの信憑性があるのか?

一例を挙げよう。

東京都心では、この10年間、オフィスビル供給ラッシュになっており、

オフィス面積は着実に増えてきている。

なので、「千代田区」や「港区」に勤務する人の数、つまり「昼間人口」は

「増えている」と考えるのが自然である。

しかし、国勢調査では、これら「昼間人口」は、驚くなかれ「減っている」のだ。

http://www.nli-research.co.jp/report/misc/2008/fudo081002.pdf

の2頁

>今回の国勢調査によると、2005年オフィスワーカー数は、東京都で390万8千人、

>都区部で330万6千人となり、2000年と比べ、それぞれ1.9%の減少、2.0%の減少となった。


カラクリはこうだ。

国勢調査には「勤務先住所」を記入する欄があるが、

特に首都圏では「回答拒否」の人が増加しているので、

やむなく調査員が代筆で提出せざるを得なくなる。

その場合、調査員は「現住所地」は知っていても、

「勤務先の住所」までは知らないので、「空欄」で提出することになる。

その結果、「勤務先=千代田区」とか「勤務先=港区」と特定されているデータが減って、

「勤務先=不詳」というデータが増加しているのである。

http://www.nli-research.co.jp/report/misc/2008/fudo081002.pdf

の2頁

>都区部では、2005年労働力状態不詳値が85万人(常住地ベース)となり、

>15歳以上人口745万人の11%を占めている。

>この数値は、都区部オフィスワーカー数331万人の26%に相当することから、

オフィス需要の分析においても無視できない規模である。

11頁

東京都では所定期間内に調査票が提出されなかった世帯が13.3%に達する。

国勢調査では調査票を回収できなかった世帯に対しては、氏名・男女の別・世帯員の数に

>ついて、近隣の者から聞き取り調査を実施し、調査票の未回収を補っている

一方、都内全法人を対象に、従業員数をヒアリングする「事業所・企業統計調査」では、

都心3区の従業員数は増加していることから、

「事業所・企業統計調査」の方が「国勢調査」より信憑性が遙かに高い、という状態になっている。

法人回答者になっている「事業所・企業統計調査」では、

 「回答拒否」とか「回答欄空欄」というケースがレアであると思われる。

http://www.nli-research.co.jp/report/misc/2008/fudo081002.pdf

の8頁

>事業所・企業統計調査は、全事業所・企業を対象とした最も網羅的な調査であり、

>近年は5年に一度、調査されている。

>事業所・企業統計調査の従業者数7は、2001~2006年にかけて、東京都では1.1%の増加

>(9万6千人の増加)、都区部でも1.1%の増加(7万9千人の増加)であった。

ということで、昼間人口ホワイトカラー人口)の分析ですらこの程度の体たらくなので、

他の統計結果についても、その信憑性は著しく衰えているのではないか?

http://www.nli-research.co.jp/report/misc/2008/fudo081002.pdf

ニッセイ基礎研究所レポート)もこう警鐘を鳴らしている。

国勢調査は、オフィスワーカー数の把握ばかりでなく、多くの政策や分析データ

>基礎資料になるものである。

>しかし、労働力状態だけでなく、生年月、居住期間、配偶関係などでも

>不詳値は増加している。

2010年には、10年に一度の大規模調査が実施されるため、教育(最終学歴)や、

家計収入の種類などの調査も実施されると思われるが、

>これらの調査項目についても、オフィスワーカーと同様、このままでは不詳値が急増し、

>基礎データとしての信頼性が低下する可能性が高い。

  • 統計法で罰則があるんだから、ちゃんと適用すればいいのにな。 まあ回答拒否は多い項目だと数百万人にのぼるから、いちいち罰してられないのかもしれないが、それを怠ると法の信頼...

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