2010-04-14

ほんとうの強者は敗北をもってしか語れない

2006年から、将棋大賞に「名局賞」が制定された。文字通り、その年の最も素晴らしい対局に贈られる賞である。

羽生善治はこの名局賞を三年連続で受賞した。表彰されたのは、すべて羽生が負けた一局であった。

 

第35代横綱双葉山の70連勝を阻止した安藝ノ海に、師である出羽親方はこう言ったという。

「勝って褒められる力士より、負けて騒がれる力士になれ」

 

競馬に"Upset"(番狂わせ)という名前競走馬がいた。

競馬史上最強の一頭であるMan O' War(21戦20勝)に唯一土を付けた馬であり、この一勝とその馬名のみによって、今でも強く記憶されている。

 

野球の打撃"二冠王"のうち、最も稀な組み合わせは首位打者本塁打王である(NPB史上11例、三冠王と同じ回数)。

この二冠を獲得できるくらいの打者なら、打点王も獲ってしまって当たり前だからである。

しかし王貞治NPB史上ただひとり、この首位打者本塁打王を3回獲得している。

直後の4番に長嶋茂雄が控えていながら、それでも敬遠され続けたがゆえの珍記録である。

 

ほんとうの強者は敗北をもってしか語り得ないのかもしれない、と、タイガー・ウッズマスターズ4位コメントを見て思った。

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