就職の道は断たれた。というか、自らぶった切った。
「なんか大学から変な通知きてるんだけど……」
僕の返答は決まっていた。
ぶっちゃけなんでもよかった。ミュージシャンでも、漫画家でも、プログラマでも。
今までの人生を振り返ってみて周りの反応がよかったのが文章だっただけということ。
親は肯定も否定もせず、静かに仕送りだけが途絶えた。
それからはバイト先への往復以外は外出せず、ひたすら文章を読み、書く生活が始まる。
先ずやったことは好きな作家をコピーすること。十冊ほど、写経した。
次に、小説指南本を十冊ほど読み、どの本にも書かれていることをチェックし、実践した。
頭はどんどんハイになっていき、一心不乱に書きまくった。遅れてきた青春だった。
親の援助がなくなってから三年が過ぎようとしていた。
打ち合わせ……なんて心躍る言葉だろう。これこそ、僕がずっと掴みたかったものだ。
これからは脳の趣くまま文章を書き、小説家仲間と遊び、編集者と酒を飲む、楽しいだけの生活が待っている。
「あの、印税っていうのはどの程度もらえるのでしょうか?」
フルスロットルでどもりながらたずねた。返ってきた言葉に愕然とした。
だから、デビューが決まっても「バイトやめます」とは言ってないし、生活にはほとんど変化はない。
二冊目が出せるかもわからないと知って、できるだけ編集者から出版のヒントを引き出そうと質問を並べた。
今ほど小説家志望へのチャンスが転がっている時代はないらしい。
新人賞はがんがん創設されているし、出版点数をクリアするため、面白そうな人間には片っ端から声をかけるという。
新人賞に送らなくても、ウェブにアップし、それが話題になれば、どこかの編集者がかならず見ている。
今の時代、面白い文章が書ければ、編集者の目に留まるチャンスはいくらでもあることを強調した。
僕の知り合いにウェブ小説家がいた。彼女には声がかかったことはない。
「どこかで小説を発表していて、現時点でなにもないってことは、その程度ってことだよ」
冷たかった。氷河期が到来した。話はどんどん愚痴っぽくなっていった。
前から気になっていたライトノベルの新人賞受賞を目標とする人たちが共同でやっているブログを見せてみた。
「見るまでもない」「アマチュア同士が固まったってなにも生まれないよ」「それよりもプロと知り合いになった方がいい」
自分も何冊か単行本出してるプロの作家と知り合いになって意見を聞いたりしていた。
「才能ない奴がステップアップするには、一流の人間と知り合うこと。それ以外ない」
だんだん僕の口数は減っていった。なんだかみんなを裏切っているような気がした。お腹が妙に重い。
……吐いた。気がつくと口に入れたものをぜんぶ嘔吐していた。
デビューが決まるとすべての懸念事項が解決すると思っていた。
悩みはぜんぶ丸っきりなくなり、ぬくぬくと創作だけに専念できると信じていた。
もし良かったら乙女ゲームとかのシナリオとか書かない? ジャンルは吸血鬼もの(と仮に決定してある)。企画俺(ということにしてある)。一応うちの会社はゲーム作る会社だよ。 金...