2009-09-27

日本林業の特徴は、密植にある

林業における密植の効果。

日本林業の特徴は、密植にある。密植は、苗を植える時に、極端に狭い間隔で植える事であるが、これによって、木と木の間が狭くなり、日が当たらなくなる。

すると、枝が伸びても、日照不足で枯れて腐って落ちる。人間の手で枝打ちをすると節が残るが、腐って落ちた枝の節は残らない。このため、無節の良い材木が取れるようになる。

縦横1メートル間隔で植えると、1ヘクタールあたり10000本の苗を植えることになる。この状態でしばらくたつと、木の上部だけに枝がついた林になる。そこで、半分くらいを切り倒す。間隔が広がり過ぎると枝が生えてしまうので、間伐する時期を決めるのは重要な判断になる。上部の枝だけで木を太らせる事で、無節で太い材木を育てるのである。

ここで重要なのは、元気な木を残すのではなく、弱い木を残すということである。元気な木は成長が早かった分だけ、木目が粗いし、何度も枝を伸ばしては枯れて落としてを繰り返して来た分だけ、節の痕跡も消えずに残っている可能性が高い。弱い木は上部の枝だけで細々と伸びてきた為に、枝を伸ばす事も無かったであろうから、節が残っている可能性が低いとなる。さらに、太る余地があるという事は、それだけ、節を消せる余地があるという事になる。苗を植える時に、強そうな苗と弱そうな苗を交互に植えるという配慮をするというのが、一番良いのだが、実際に育ててみないと、どうなるかわからない部分もある。

密植は、林の中に光を入れない事で、節を発生させないという効果を狙う手法であるが、同時に、地面に他の植物を発生させないという結果を招く。密植中の林の地面は、湿気が多く、日照が少ない為に、コケの類だけしか発生できなくなり、地盤がゆるくなりがちである。このような環境でも生育できる植物で、かつ、材木にした時に価値の高い植物ということで、杉が選択されることになる。

杉は、適性があるが故に密植されるというよりも、自然界において、密植によって育成に適した環境を自ら作り上げる特性があった為に、人間に利用されるようになったとも考えられる。

樹齢20~30年程度では、磨き丸太にして使うくらいしかないし、40~60年程度でようやく板が取れるようになり、80年を過ぎたら角材の柱に使えるようになるというのが、林業である。つまり、間伐によって抜き出した材木や製材残りの端材の使い道がないと、採算が取れない商売になってしまう。林業において一番重要なのは、この、間伐材の使い道を開発して採算を維持する事であろう。

200年もつ住宅のような長寿命化住宅では、スケルトン・インフィルになり、インフィルには、2×4が想定されている。その部材に、国産林業品を使う事は、不可能ではない。スケルトン構造強度を担うので、インフィル耐震強度等を考えなくて済むから2×4で十分となり、競争力のある価格設定が出来れば、間伐材の使い道の一つとなりうるであろう。

[2009.9.26] http://www11.ocn.ne.jp/~ques/diary/diary.html

  • ちなみに、こんな感じに人工的に杉を植えまくったのが花粉症の原因の1つと言われています。 日本はもともと広葉樹中心の土地で、杉はあまりありませんでした。

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    • そこまで高尚じゃなくとも、割り箸・爪楊枝・園芸用品、小物家具(CDラックとか)なんかでもいいし、昔ならネオライト・オガライトとか、集成材の類、あとは再生紙と(大量の輸入新材を...

      • 俺みたいな経済・政治オンチが短絡的に考えると ・国外の間伐材に関税をかける。 ・それを財源として国内の間伐材利用に給付金を出す。 って事を考えるんだけど、そうはいかんもん...

        • いまは環境税って考えがあるから、受け入れられるかもしれないし、国内の森林資源・林業の活性化にもつながるし、熱帯雨林の破壊問題輸入しないでいいということは船舶輸送が少な...

          • 一点だけ気にかかる。 いまいいと思っていることでも結実する頃には全然状況が変わってたりする。 これって、「どうなるかは解らない」と言いつつ 「放置の結果、状況が好転す...

      • じゃぁ高付加価値品を作ればいいじゃないか、ということになるんだけど、「間伐材でもいいから、国産の杉材じゃないとできない高付加価値品」ってのが何よ?って話。 難しいね…...

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