原油価格を吊り上げる事は、原油の輸出によって国家財政を賄っている産油国にとって、手っ取り早く利益を上げる手段であった。生産調整を行って価格を維持するという伝統的な手段では、抜け駆けをする所が出る。さらに価格が上昇すれば、その価格で採算が取れる地域が産油国となる。価格を吊り上げて利益を増やそうとしたのに、利益を独り占めできない。
生産調整による価格のコントロールは、非効率的であるが、少なくとも、産油国にはそれ以外の手段が与えられていなかった。
しかし、イラクの問題で、アメリカに産油国の安全保障の義務を背負わせるのに成功したことから、原油価格をWTIの相場によって吊り上げるという手段が利用可能になった。
WTIの市場はアメリカの市場であり、それをコントロールする権利は、アメリカにある。コントロールを緩めて、原油価格を吊り上げ、産油国に米ドルをつかませ、その米ドルの運用先として、CDSを準備した。
腐敗したCDSを虚構の高値で売った原油の利益で買わせ、辻褄をあわせるというプランであった。無論、予定外のグローバリゼーションで成長してしまった後進国・中進国の利益も、CDSで吸い取る予定であった。問題は、産油国や成長した国家がそろいも揃って反米で、ユーロにお金を動かし、ユーロがCDSを買ったという事であろう。おかげで、EUは空前の好景気を得たが、虚構が崩れ落ちるのに巻き込まれた。
EUの赤字をコントロールしなければならないという事で、規制でがちがちに固められているWTIであるが、EU側の業者が価格操作をやれるという話に、産油国のSWFを乗っけるという罠が発動していたのである。
産油国にとって、WTIの価格を吊り上げるのは、相互不信の原因でしかない生産量調整よりも、はるかに効率の良い利益の確保であった事から、食いついた。1バーレル=$75という目標も出ていた。
そういうわけで、70ドル前後にまで吊り上げてもう一息、もう一息と、お金を引っ張っていたのだが、そろそろ、ばれたようである。確かに原油価格は上昇しているが、原油の需要自体が減退してきており、油価の上昇によって産油国となった地域の売りを、産油国が買い支えるという、馬鹿げた相場が続いていた事に、気づかれてしまったようである。
やめるには、契約を打ち切るという正当な手段もあるが、それには、産油国のSWF同士で足並みをそろえなければならない。しかし、SWFが資金ショートを起こして破綻したという理屈であれば、足並みをそろえる必要は無いし、高値で掴んだ先物の赤字を補填する義務も無くなる。
WTIの価格がドスンと落ちたが、産油国がSWFを切り離して逃げるのであれば、買支えの実務を請け負っていた所は、損失を減らす為に売りに出る。どこも買わなくなるので、下落が止まらなくなる可能性があるのであった。
[2009.9.25] http://www11.ocn.ne.jp/~ques/diary/diary.html