financial crisisからeconomic crisisへ。
腐敗したCDS(credit default swap)で大損をした金融機関の危機が、いよいよ、経済全体への危機へと広がり始めている。
CDSを買うということは、債務者の借金の連帯保証人になる事であり、債務者がdefaultしたら、債務者の代わりに、全額を被らなければならなくなる。危機以前の金融機関の羽振りが良かったのは、産業への融資が全然ダメであったが、双子の赤字の増加によって運用しなければならないお金が増える状況において、CDSという投資先を見つけたからであり、それに投資したがる新興国や産油国との間に入って手数料を稼げていたからである。
金融危機に対して、中央銀行が特融を出しまくって一時的に支え、会計基準を捻じ曲げて評価額の粉飾を認めて、損失の表面化を年間利益の中に押さえ込むことで、表面的には金融危機は沈静化していることになっている。アメリカでは、今年に入ってから、すでに92行の地方銀行が破綻しているが、政治的には、金融危機は沈静化している事になっているのである。
金融機関の危機が沈静化するということは、金融が引っ張っていた経済構造から金融の影響を取り除くという事でしかない。金融危機を沈静化したら、産業がダメで成長要因が無いという現実が表面化する事になる。この現実への対策は、産業を再興する事しかなく、その為の施策が望まれるのだが、遅々として進んでいない。
バブルの頃は、家屋の建築や担保余力を使った融資による消費といった要因があったので、それなりに仕事が発生したが、バブルが終わってしまったら、それらの要因が消え、労働力の過剰という現実だけが残る。賃金は低迷し、通貨が弱くなる事から輸入物資の価格は上昇し、スタグフレーションへと向かうことになる。しかも、金融機関が抱え込んだ莫大な負債は、毎年の納税額を0にして償却する事になり、金融機関からの納税額が大幅に減少するし、バブル期に良かった事業は軒並み左前になっており、このセクターからの納税も期待できない。財政出動をしたくても、歳入欠陥が確実視される状況では、赤字国債を発行して手当てをするくらいしか道が無いのだが、この赤字国債を買ってくれる経済的な余裕のある人は国内には無く、海外に買い手を求めるには、通貨が強くなる見込みが無ければならない。幾ら金利を引き上げても、それ以上に通貨の価値が下落していくのでは、利回りはマイナスになる。
輸入に頼らずにやっていける国家であれば、スタグフレーションの影響はかなり小さく出来るが、それでも、通貨の強弱と金利というパラメーターによって影響を受ける。輸入を必然とする国家においては、スタグフレーションに入ってしまうと、自立回復は難しくなる。日本はアメリカよりも条件が悪く、アメリカよりも早く、有効な手を打たなければならないのである。
[2009.9.15]