週末のことだ。
友人宅で明け方まで飲んでいて、思いもよらず色恋事の話になった。
私は昔からこのテの話は苦手というか、どうしても小っ恥ずかしくてなかなかフランクになれない。
結婚適齢期を迎えても未だ浮いた話の一つも無く、そもそも所謂ところの恋愛というものに無縁に過ごしてきた。
だから色恋事の話と言っても、自分には持ち出せるネタがないというのも、苦手な一因なんじゃないかと思った。
そんな私だが、半年ほど前に知り合った人に多少の好意を寄せていた。
惚れるであるとか、恋心を寄せるであるとか、そういった類の強い感情ということではなくその人の纏っている、何となく嗚呼いいなぁと思わせるような、柔らかい雰囲気に惹かれただけのことである。
そう、たったそれだけのことだし、男女の別を問わず誰かを好意的に迎えることは多々ある。
ただそれだけのことを、やれ恋だの何だのと盛り上がれるほど私は浮かんではいない。
相手のことを大して知りもしないのに、すぐにそうやって色々と妄想しては浮かれられる愚かさを、私は拒んでいた。
特定の異性に抱くこの好意は一過性のものであり、そもそも自分などとどうこうなろうなんて考えるのは都合の良い妄想であり、とても現実を見据えているとは言えない。
このような妄想に費やす時間があるのならば、自分にはまだまだやるべきことがたくさんあるのではないか。
私は昔から努めてそのように考え、拒んでいた。
しかし無論、恋人が欲しいと思わなかったわけではない。
一体どのように恋をするのか甚だ謎めいてはいたが、漠然とした願望として誰かと寄り添いたいという想いは抱いていた。
ただ、そのプロセスはやはり分からなかったし、自分からは積極的に好意を抱くことをシャットアウトしてきたので、いつ訪れるともしれないその恋とやらを待つ以外にはどうすれば良いのか知らなかった。
冒頭の友人宅での話で、流れ上好いた惚れたといった話を振られた。
そこで前述の好意を抱いた人について、結構好き、かもしれない、といった旨のことを漏らしてしまった。
私は基本的に自分の本心を自分の中だけに留め、誰かに漏らすということはしない。
口に出して、誰それに好意を抱いているなんて、ただの一度も言ったことはない。
しかしその私が、その夜、そんなことを、言ってしまった。
するとどうしたことか、自分の中のその人に対する好意がより大きなものになっていくのを感じた。
何度も言い淀んだ末に言ってしまってしばらく、指先が震えるのを堪える為に拳を握っていた。
頭がガンガンするような高揚に戸惑っていた。
その時、もしかしたら恋というのはこういうことなのかもしれないという仮説を考えていた。
多くの恋愛小説がそうであるように、一番初めのきっかけなんてものは極めて些細な事に過ぎないし、そこで発生する感情もさしたるものではない。
ただその僅かに発生した火種に、藁を放り込み薪をくべてどんどん大きな炎にしていく。
その行為が、誰かに公言するであるとか秘密のノートに相手の名前を書き綴るであるとか、そういったものにあたるのではないだろうか。
そんなことをしながら、どんどん自分の中で再帰的に盛り上げていって、最終的に行動に移したり移さなかったりするこの一連のプロセスこそが、世に恋愛行為を呼ばれているものなのではないだろうか。
そんなことをくどくどと考えている間にも、図らずも薪をくべてしまった私の火の手は、まだ小さいながらも着々と進行している。
いつもの私ならば早々に身の相応をかんがみて消火活動に勤しむところである。
しかし珍しく、此度は自分の中で発生したその流れに身を任せてみようかと思った。
果たして大きく燃え盛りきった恋の炎とは、我が身をも焦がし得るのだろうかという好奇心も、多少含んでいないとは言い切れない。
とはいえ、その人との距離はまだまだ随分遠い。
その人は友人の友人であり、私とはたった一度みんなで食事に行っただけの間柄であり、当然互いに連絡先も知らなければ、そもそも私のことなど忘れているのではないかと思うぐらい、薄い繋がりだ。
近々、また友人らと食事に行く予定があり、その場にその人も誘ってもらいたいという遠まわしな私の要求は受け入れられ、それが二度目の対面となる。
一体どのようのその人と親密になれば良いのだろうか。
友人の不確かなる情報では恋人はいないらしいが、どう振舞えば好意を抱いて貰えるだろうか。
こんなことを真面目に考えるのは、もしかすると初めてかもしれない。
大して実のない幾つもの思案は、甘美でありながらもどこか苦々しい。
そしてこんなことを考えるがあまり、生産性を落としている自分が恨めしい。
情熱たる自分と冷静たる自分とが、頭の中で罵り合うのが続いていて、正直少し困惑している。
いやいやしかし参ったね。
よもやこの私が煩うとは。
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