父に最後に会ったのはいつだろうと思って、記憶を辿ってみた。多分5年以上前になる。
同じ市内に住んでるし、父の住んでるマンションの友達の家にたまに遊びに行ったりはしたけどずっと会ってない。
小さい時、私は自分の殻に閉じこもる子だった(って言っても鬱とかそういうのでなく単にオタク気質だった)ので
その頃読んでた本の内容は覚えていても周囲の様子とかは全然記憶にない。
色々父の方に問題があったらしいのだけど、多分父の浮気が引き金だったような気がする。
母は父に黙って私と弟を連れて出て行った。
私は小学校から帰ってきて、家具の減った家を後にランドセルをカゴに入れて新しい家まで自転車をこいだ。
なんとなく寂しかったような記憶はあるけど、母に家を出て行くことを知らされた時に具体的にどう思ったのかは覚えてない。
私は母が世界で一番好きだ。こんなに素敵なお母さんは他にいないと思う。
そんな母が、父の話をする時だけ少し顔を引きつらせる。それが嫌で離婚の詳しい経緯とか理由は全然聞いていない。
所々見える断片から想像するに、あの頃の私が気付かないような所で色々と酷い人だったらしい。
私は母を心から信頼している。ちょっとやそっとの欠点くらいじゃ離婚なんてしない人だと思うし、
ここまで父のことを毛嫌いするようにはならないんじゃないかと思う。
母の周りで当時相談に乗っていた人たちも、あの人はほんとに酷かったと言っている。
母の誇張表現とかでなく、多分父は本当に酷い人だったんだと思う。
両親が離婚して片親になったことで、私にあまりダメージはなかった。
今の私の家は母と私と弟で完成しているし、そこに寂しさは感じない。
でも、最近なんだか父との思い出がぽつぽつ蘇ってくる。
昔、夜寝る前に聞かせてもらったギャグ交じりの昔話が毎晩楽しみだったこととか。
父と弟と三人でした風船バレーでお腹が痛くなるほど笑ったこととか。
うどんくらいしか料理のレパートリーはなかったけど、それが物凄くおいしかったこととか。
あれよりおいしいうどんを私は今まで食べたことがない。
今もあの家に一人で住んでいるのかな。もしかしたら再婚とかしてるかもな。