2007-03-02

記号に置き換え世界を理解してるんだから基本的には一緒だよね

脳の解析が終わったのが15年前。信号を送る技術確立したのが8年前。そしていわゆる電脳化が実用化されたのが3年前。当然深い部分人格や性格や記憶などの上書きはできなかったが、それでもある程度の操作はできた。

実用化される前は、ますます仮想世界に入り込む人間が増えて少子化に拍車がかかると言われていたが、実際には逆であった。出生率は着実に上がったし、結婚する男女の数も、交際する男女の数も驚くほど増えたのだ。当初、原因はわからなかったが、しばらくしてわかることとなった。あるソフトが出回っていたためだ。それは目に映る人間の顔(後のバージョンで体型も)を任意の顔に置き換えるソフト笑い男の顔が好きなタイプの顔に置き換わったようなものであった。記憶の上書きにあたるのではないかと言われたが、正確に言えば同時に録画してる映像の上に置き換え、それを見ているだけであるので、記憶の上書きにはあたらなかった。

ソフトウェア進歩していたからそういったソフトが開発されていたのだが、現実と変わらぬ質感を持った人間を仮想空間に多数配置するのはまだ時間が必要であった。だから、人々はそのソフトを使い、仮想を現実に求めた。現実で仮想ゲームを行っていたのだ。正確に言えば、彼らは現実を生きてない。録画した映像に自分好みの相手を置き換えた映像を見ているだけだ。

しかし、現実では男女が互いを求め合い、子が次々に生まれるといった、とても自然な様子に見える。だが、彼らは互いを求めあっているように見えて、実は求めあっていない。彼の目には本当の彼女が映ってないし、彼女の目にも本当の彼は映っていない。本当の彼らはどこにもいないのだ。互いに仮想な理想を夢想のように抱いている。求めているのは質感と熱量、人によっては精子子宮、だけである。

だが、そもそも恋愛というのは互いに理想を押しつけあっていたのだから問題がないと言うことができるかもしれない。テクノロジーがその部分を先鋭化しただけであって、何ら問題がないではないかと。しかし、私にはやはり何かが違うように思える。彼らは現実に生きているにもかかわらず、誰もそこにはいないのだ。お互いがお互いを、置き換えているのだから、誰も本当の姿を知らない。誰もそこにはいないのだ。

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