2007-02-02

終わりの日。夜、足音とともに。

昔親に早く寝ろと言われて、ベッドの中で想像していたの一つ。

ある男がいる。

全身黒づくめで、深く帽子をかぶっている。そのせいか闇に溶け込み、気づく人は誰もいない。

そして、昼間にして、同じ格好をしているものの、誰一人として気に留めることはない。

男は僕をずっと追っている。

彼は僕がたどってきた道、通学路や駄菓子屋の前や塾への道をトレースするように、同じスピードで動いている。

しかし、数日か数時間か数分か数秒、僕より遅れていて、ずっと追いつくことはない。

ただ、僕はこうしてベッドの中で目を瞑っている。次第に眠くなってくる。

眠りに落ちてしまったら、黒づくめの男に追い付かれてしまう。

捕まったら殺されるかもしれない。消されてしまうかもしれない。

僕は毎夜の如く、これを想像した。馬鹿げた話だが、一時期不眠症にすらなった。

そうしないと眠れなかったのだ。

今思えば、僕なりの寂しさを解消するすべだったのかもしれない。

そうやって僕を気にしている人がいるかもしれないという妙な期待と不安感が枕の傍で蠢いていた。

ただ、本当に怖かったのは、ある朝、本当に想像通りの男が通学路に立っていて、

僕をじっと見つめていた事だった。

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