夜中に部屋の中でゴソゴソと物音がするので、寝たふりをしながらそっと目を開けると、ベッドの脇でキノコの群れが踊っていた。
私は珍しいこともあるのだなと思いながらその光景を眺めていた。
豆電球の僅かな明かりの下でシイタケやシメジが楽しそうにクルクルと回り、輪の中心ではマイタケが優雅に舞っていた。
5分ほど経った時、私はキノコ達の踊る輪の上に、1つの箱のようなものが浮かんでいることに気づいた。
キノコ達もやがてその箱の存在に気づいたのか、踊りを止めて箱の方を眺めだしていた。
私はキノコ達が踊りによって何かを召喚でもしたのかと思ったが、箱の出現はキノコ達にとっても未知の出来事らしく、隣のキノコとヒソヒソと会話をしたり、心配そうに顔を見合わせていた。
箱は徐々に高度を下げていき、やがてキノコ達の輪の中に着地すると、フタがぱかっと開き、中からキノコの王様、マツタケが現れた。その瞬間、キノコ達の間に電流が走ったように私には見えた。
マツタケは箱から降りるとキノコ達を見渡し、そしてゆっくりと、優雅に踊り始めた。
キノコ達はその姿をうっとりと見つめていたが、やがて一茸ずつマツタケに合わせて踊り始めた。
そして私の部屋の中は再び踊るキノコ達で一杯になった。どのキノコを見ても自信に満ち溢れているように見えた。
私はこういうものを見学するのは初めてだったが、おそらく今夜はキノコ舞踏会が始まって以来の最高の夜に違いないのだろうと思った。
そして、終わりのときは唐突に訪れる。 マツタケの周りを無尽に巡り、すべてのキノコが自らを今宵の主役であると誇って競い合った一夜の宴。 その宴が終局へと達しようかとした、ま...