1955年8月11日朝日新聞掲載
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何も彼も いやになりました。
そのお金で 何とかならなかったのかしら
“石の像は食えぬし、腹の足しにならぬ”
原爆後十年を ぎりぎりに生きる
被災者の 偽わらぬ心境です。
ああ、今年の私には気力がないのです。
いくら、どなったって 叫んだとて
深い空に消えてしまうような頼りなさ
何等の反応すら見出せぬ焦燥に
すっかり疲れてしまいました。
ごらん 原子砲がそこに届いてる。
何も彼も いやになりました。
皆が騒げば騒ぐ程 心は虚しい。
今までは 焼け死んだ父さんや母さん
姉さんが むごたらしくて
可哀相で 泣いてばかりいたけど
今では 幸福かも知れないと思う
生きる不安と 苦しさと
そんなこと知らないだけでも・・・
ああ こんなじゃいけないと