2013-08-08

ひとりごと福田須磨

1955年8月11日朝日新聞掲載

長崎市平和祈念像完成に寄せて

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ひとりごと福田須磨


何も彼も いやになりました。

原子野に きつ立する 巨大な平和

それはいい それはいいけど

そのお金で 何とかならなかったのかしら

“石の像は食えぬし、腹の足しにならぬ”

さもしいと いって下さいます

原爆後十年を ぎりぎりに生きる

被災者の 偽わらぬ心境です。


ああ、今年の私には気力がないのです。

平和! 平和! もうききあきました。

いくら、どなったって 叫んだとて

深い空に消えてしまうような頼りなさ

何等の反応すら見出せぬ焦燥に

すっかり疲れてしまいました。

ごらん 原子砲がそこに届いてる。


何も彼も いやになりました。

皆が騒げば騒ぐ程 心は虚しい。

今までは 焼け死んだ父さんや母さん

姉さんが むごたらしくて

可哀相で 泣いてばかりいたけど

今では 幸福かも知れないと思う

生きる不安と 苦しさと

そんなこと知らないだけでも・・・


ああ こんなじゃいけないと

自分を ムチうつんだけど・・・

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