ぼくは、この理論をレクチャーされたとき、生まれて初めて「魂を揺さぶられた」気分になった[*1]。
なぜなら、このような主張が、思想・信条としてなされているのではなく、「(ある仮定のもとで)数学的に証明される事実」として論じられているからだ。
それまで、自分の思想・信条を個人的な嗜好から大上段に押しつけてくる人たちにはやまほど出会った。
正直いって、「社会科学」というのはそういった「嗜好のバトル」だと思っていた。
そんなぼくは、数学を使った論証によってこのような議論を展開することができる、と知って驚愕したのである。
この理論こそまさに、ぼくのそれまでの数学観を覆し、学問観も人生観もひっくり返し、ぼくを経済学の虜にしたものなのであった。