2010-01-22

酒ヲ煮テ電子書籍ヲ論ズ

ある日 AppleAmazon から梅園での酒宴に招かれた。Apple は過日出版社と交わした密約が Amazon に露見したのではないかと気が気でなかったが、出迎えた Amazon の表情は晴れやかだった。

Amazon 曰く

Apple殿、よう参られた。この度は貴公と電子書籍英雄について存分に語りたいと思った次第。貴公は久しくデジタルコンテンツを販売されている故、当世の電子書籍英雄をご存じであろう」

Apple 曰く

「いやいや、それがしは音楽アプリの販売に追われる身、とても電子書籍までは考えがおよびませぬ」

Amazon 曰く

「ご謙遜召されるな。是非ともお聞かせ願いたい。電子書籍英雄とは」

Apple 曰く

「そうですな、では Barnes & Noble はいかがでしょう。最大手の書店で、リーダーnookタッチスクリーンサポート。従えるコンテンツは 750,000冊を数えると聞きます」

Amazon 曰く

「あれは書店の書庫を守る番人。その程度では英雄とは呼べますまい」

Apple 曰く

「では、Sony は。Sony ReaderGoogleパブリックドメインコンテンツが利用可能なほか、図書館からの貸し出しも可能。Smashword などの自費出版プラットフォームとの提携も進めていますが」

Amazon 曰く

「自前では環境を用意できぬ者の集まり。英雄とは呼べますまい」

Apple 曰く

「では Skiff はいかが。全面タッチスクリーン解像度Skiff Reader を発表。薄型軽量かつ耐久性の高いデバイスです。」

Amazon 曰く

デバイスだけで天下は取れ申さぬ。Skiff Service とてどれ程のものか」

Apple 曰く

「では日本電子書籍出版協会(仮)は」

Amazon 曰く

「・・・・・・」

Apple 曰く

「参りましたな。もう浮かびませぬ。」

Amazon 曰く

「よろしいか Apple 殿。英雄とは、世界中書籍を販売購入できるプラットフォームを整えてその機能を万人に開放し、著者と読者の新しい関係を示すことのできる者のこと」

Apple 曰く

「して、それは」

Amazon 曰く

「当世電子書籍英雄と呼べる者は即ち、君と余だ」

Apple は内心を見透かされたような心地がして、思わず手にしていた石板を取り落としてしまった。この時天地を裂くばかりの雷鳴が響き、豪雨が激しく降りだした。

Apple 曰く

「いや、お恥ずかしい。それがしは雷が大の苦手で」

Amazon 曰く

「はははは、しっかりなされよ Apple 殿。そのように小心では英雄はつとまりませぬぞ」

Amazon はそう言って大笑したが、その眼は Apple を見据えたまま笑ってはいなかった。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん