http://anond.hatelabo.jp/20090318024902
誰かさんにニッキョーソというがっかり命名をされた仔犬は、私との邂逅以来、ブクブク肥え続けている。
曇天のあの日、公園で、か細く啼いたあのイキモノをお持ち帰りして以来、
あの小憎たらしいモバゲーのマキも、メルマガという名の産業廃棄物を押し付けなくなった。快適快適。
これではまるで、マキ避け目的でニッキョーソに鶏肉の水煮缶を与え続けているみたいだ。
お前の食費のせいで私は、ささやかな楽しみだったファミチキを我慢しているんだ。
それをこいつは分かっているのだろうか。 こやつめ、ハハハ。
恨めしいような羨ましいような気持ちで、ニッキョーソ唯一の取り柄であるふあふあの耳毛を撫でる。
こら、目を細めるな小首を傾げるな体をこすり付けるな。
私と暮らし始め、見違えるように毛並みが良くなった犬を眺めながら、思いがけず自分の頬筋が緩むのを感じた。
…相変わらずヨダレすっごい出てるけど、これって躾するべきなんだろうか。
ミヤネ屋を観ながら上の空で自宅を警備していると、トントン、と錆ついたドアが向こう側を敲かれる音がした。
ベニヤとトタンで構成されたボロアパートだ。響くから。ちょっとの衝撃で響くから。
はいはい今ドア開けますからもうノックやめてくれーと心の中でこぼしつつ、錆びたドアノブを回した。
「久しぶり増田さん。マキです。」
へ?
「え、と。どちらのマキさんでしょうか。」
「あはは、やだな増田さんてば。3ヶ月連絡しなかったぐらいで忘れないで下さいよぉ。」
「モバゲーの、マキです。」
「モバ…?」
こういう時なら当然の反応をさせてもらおう。
状況を飲み込めず鳩に豆鉄砲フェイスでフリーズする私と、部屋の奥からトコトコ出てくるニッキョーソ。
「あ、ニッキョーソじゃない。おっきくなったねえ! 増田さんにここまで育ててもらったんだ。」
…なんでこの女、ニッキョーソの名前知ってるんだ? 私の名前はともかく、この毛むくじゃらヨダレ団子の名前を。
頭がガンガンする。混乱して思考を展開できない。記憶を辿れない。
さっきまで満面の笑みで仔犬を撫で回していた自称モバゲーのマキが再び口を開く。恐ろしいほどの無表情で。
「ねぇ増田さん、明日からあなたが "次のマキ" になることが決まりました。」
それだけ言って彼女は、私の左肩をポンポンポン、と3度叩き、「それじゃ。」私の部屋を後にした。
踵を返す瞬間、彼女は口角をつり上げ奇怪に嗤ったように見えたが、真相は毛むくじゃらヨダレ団子のみぞ知る。
…またモバゲーのマキがメルマガ寄越しやがった。 冷めたファミチキを齧りながら、工事現場の脇を抜ける。そういえばコンビニの店員インド人だった。 そのまま目的なく歩き続けて...
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