2009-04-22

ニッキョーソと私とマキ

http://anond.hatelabo.jp/20090318024902

誰かさんニッキョーソというがっかり命名をされた仔犬は、私との邂逅以来、ブクブク肥え続けている。

曇天のあの日、公園で、か細く啼いたあのイキモノをお持ち帰りして以来、

あの小憎たらしいモバゲーのマキも、メルマガという名の産業廃棄物押し付けなくなった。快適快適。

これではまるで、マキ避け目的ニッキョーソに鶏肉の水煮缶を与え続けているみたいだ。

お前の食費のせいで私は、ささやか楽しみだったファミチキを我慢しているんだ。

それをこいつは分かっているのだろうか。 こやつめ、ハハハ

恨めしいような羨ましいような気持ちで、ニッキョーソ唯一の取り柄であるふあふあの耳毛を撫でる。

こら、目を細めるな小首を傾げるな体をこすり付けるな。

私と暮らし始め、見違えるように毛並みが良くなった犬を眺めながら、思いがけず自分の頬筋が緩むのを感じた。

…相変わらずヨダレすっごい出てるけど、これって躾するべきなんだろうか。

 

ミヤネ屋を観ながら上の空で自宅を警備していると、トントン、と錆ついたドアが向こう側を敲かれる音がした。

ベニヤとトタンで構成されたボロアパートだ。響くから。ちょっとの衝撃で響くから。

はいはい今ドア開けますからもうノックやめてくれーと心の中でこぼしつつ、錆びたドアノブを回した。

「久しぶり増田さん。マキです。」

へ?

「え、と。どちらのマキさんでしょうか。」

「あはは、やだな増田さんてば。3ヶ月連絡しなかったぐらいで忘れないで下さいよぉ。」

モバゲーの、マキです。」

「モバ…?」

こういう時なら当然の反応をさせてもらおう。

状況を飲み込めず鳩に豆鉄砲フェイスフリーズする私と、部屋の奥からトコトコ出てくるニッキョーソ。

「あ、ニッキョーソじゃない。おっきくなったねえ! 増田さんにここまで育ててもらったんだ。」

…なんでこの女、ニッキョーソの名前知ってるんだ? 私の名前はともかく、この毛むくじゃらヨダレ団子の名前を。

頭がガンガンする。混乱して思考を展開できない。記憶を辿れない。

さっきまで満面の笑みで仔犬を撫で回していた自称モバゲーのマキが再び口を開く。恐ろしいほどの無表情で。

「ねぇ増田さん、明日からあなたが "次のマキ" になることが決まりました。」

それだけ言って彼女は、私の左肩をポンポンポン、と3度叩き、「それじゃ。」私の部屋を後にした。

踵を返す瞬間、彼女は口角をつり上げ奇怪に嗤ったように見えたが、真相は毛むくじゃらヨダレ団子のみぞ知る。

それ以来ニッキョーソは、ヨダレを垂れ流さなくなった一方で、ドアのノックの度に異様に怯えた表情を浮かべるようになった。

記事への反応 -
  • …またモバゲーのマキがメルマガ寄越しやがった。 冷めたファミチキを齧りながら、工事現場の脇を抜ける。そういえばコンビニの店員インド人だった。 そのまま目的なく歩き続けて...

  • http://anond.hatelabo.jp/20090422001338 あの女が私のアパートを訪れて以来、ニッキョーソの様子がおかしい。 日に日に食欲が衰え、抜け毛が増え、ついには尻の左側に10円ハゲまでできてしま...

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