「このフリスクより小さな4つぶの魔法のおくすりを飲めば、数時間はわたし、幸せな気分でいられるのよね?」
問いかけられたのだから、何かこたえなければと思い、わたしが言葉を選んでいる隙に、その子は魔法のおくすりなるものを飲んだ。
コップに半分弱入っていたミネラルウォーターで一気に魔法のおくすりを呑み込み、黙ったまま冷蔵庫に向かって歩いていき、再びコップにミネラルウォーターをついだ。
「はじめの頃はね、魔法のおくすりを飲むと本当に幸せな気分になれたの」
そう言いながらソファーに座り、再びミネラルウォーターを口に含む。
「でも、最近ははじめの頃ほど幸せな気分にはなれなくて。それでもね、飲まないよりはマシなの」
その子が魔法のおくすりを飲みはじめたのは、10年以上前からだという。
最初は興味本位で飲んでみただけで、幸せになりたいと思って飲んだのではなかったと。
そのうち、気が付いたら魔法のおくすりを飲む事自体が習慣になっていたそうだ。
そして、いつの間にか、魔法のおくすりを必要とする状態になったのだとその子は話す。
「ある時ね、とても悲しい事があったの。どうしても辛くて、感情を抑える事もできなくなってしまって、私はこのおくすりを本当に必要とするようになっちゃったの」
何があったかは聞かなかった。何があったかを聞いて欲しそうな話し方でもなかった。
「でもね。私いま、とっても幸せなはずなの。人生で一番幸せな時なんじゃないかって思う時もあるくらい」
「それなのに。何だか怖くて。つい飲んじゃうの。飲まなくても大丈夫なのに、飲んじゃうの」
魔法のおくすりを飲むのをやめたいの?
と、やっとその子に質問する事ができた。
「そうねえ。やめたいといえばやめたいかな。魔法のおくすりがなくたって幸せな事があるもの。でも、目の前の幸せに集中できないのはなぜかしら」
最後のことばに、クエスチョンマークはついてないように聞こえたから、わたしは何もこたえなかった。
ただじっと、静かにその子がしゃべり出すのを待つのみ。
その子は嬉しそうな顔をして、窓の方へ走って行った。
窓の外、家の外に出てみようとは思わないみたいだけど、外の景色を見たいのは確かみたいだ。
ある日、私はその子の家に遊びに行った。でも、その子はいなかった。 代わりにその子のお母さんが居た。その子のお母さんは、その子が今お父さんと病院に行っていて、もうすぐ帰っ...
お母さんの立場を想像するに、聞いてくれる人がいるだけで踏みとどまれる一線ってあるんだろうなぁ。
もの書き志望です。褒めてもらってちょっとてれてます。 ラノベ文体は好きじゃないんだけど、まだ自分の文体というものが固まっていなくてどうすればいいのか試行錯誤しています。 ...
本職ですらない人間の中にもこれだけライバルが存在し得る。 それがわかっただけでもラッキーじゃない? もう怖いもんないでしょ。
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