アッチ向いてホイなどの遊戯はもちろん、係や委員や長を決めたり、席替えや給食の余りの争奪戦、鬼ごっこの鬼決めにいたるまで、ジャンケンは子供のコミュニティで幅広く用いられています。
ではその係だの委員だのを決めるジャンケンで負けるとどうなるでしょうか。
勢い勇んで立候補したのにジャンケンごときで敗れる。バツが悪すぎます。かなりショックを受けますね。そして、もう二度と挑戦するまいと、萎縮効果が働きます。長じて、「めんどくせーからなんでもいいや」という人間になってしまうかも知れません。また、お目当てのあの娘をねらった席替えや、大好物のきなこ揚げパンを求める給食の余りの争奪戦なんかに敗れた者の無念さは名状しがたいものがあります。
逆に勝った場合。子供時代の役職なんて名ばかりで、寧ろ何もしなくてもいい、名誉職的な意味合いが強いのです。そのくせ、その地位にいるだけで周りからの評価は鰻登りです。隣のあの娘とも仲良くなっちゃって、まさにこの世の春です。また、子供はジャンケンごときのでも、強者にあこがれるものです。こうして好意の拡大再生産が行われ、長じてグループの人気者・中心人物になっていくでしょう。そうした人物が、社交的で、いわゆるモテ系になっていくのは自明の理でしょう。
このように、決定的なジャンケンに一度負けただけで、彼または彼女の人生に大きな影を落とす事になるのです(暴論)。
まあ、ジャンケンを用いないで他の手段を用いた場合も問題あるんですけどね。投票なり多数決では選ばれなかった人に酷ですし、どうせそういうのを選ぶ基準だなんてかっこよさとかそれまでの人気とか、運よりもタチが悪いものばかりだし。先輩や先生などの絶対的権力者が選ぶにしても、依怙贔屓(えこひいき)だなんだと騒ぐことでしょう。
ではほかに、ジャンケンで負けるショックを軽減し、もって人格形成への悪影響を防ぐ方法はなにかないでしょうか。
次善の策としては、ジャンケンの回数を増やす方法を提案したいです。
3本先取式(ウルトラクイズの成田でのトメさん方式と命名しました)や、勝ちの数の差が2を超えた時に勝利式(デュース方式と命名しました)などが考えられます。
たった一度のジャンケンですべてが決まってしまうのは、酷すぎます。(彼らにとっては)一大事なのに、たった一動作で決まってしまうですから。ならば、負けたにしてもいいところまで行った感を与えてみるのです。
たとえばトメさん方式で、1本取れたとすれば、一度で決まってしまったときよりも不公平感は減り、また次があるさと思えるようになり、萎縮効果も限定的になるでしょう。負け続けた場合でも、3連敗の確率なんて1/27です。わかりやすく言うと、本当なら一発で負けていた人のうちの90%くらい(!)が何らかの手応えを感じる事が出来るわけです。(一発で負ける率が1/3だから、3連敗する確率はそのまた1/9、三連敗しない8/9=88.9%の人は手応えを感じる)
また、デュース方式のように長期戦では駆け引きも重要になってきますから、運の支配力は相対的に下がります。もちろん、トメさん方式同様、いいところまで行った感が演出されますしね。
実際、私は高校生くらいのときから、大事な場面では相手方の承諾さえあれば、トメさん方式かテニス方式で決めています。特にそれ以降、ジャンケンでどうのこうのと思った事はありません(普通の人は思ったことなんてねーよ、なんて言わないよ絶対??)。
補足。ジャンケンの方式にはほかに複数人で一斉に行う方式や、抽選会方式(あいこが座っていいかどうか悩むやつ)なんかがあって、一概には言えないんですが、二人で対決するものを念頭に書きました。そういう場面で負けるのこそが悔しいですしね。