2010-06-30

「死になさい」と声をかけられた。

ある男に「死になさい」と声をかけられた。

そのとき私は上京したばかりで、さびしい毎日を送っていた。そこでその男の話を聞いてみることにした。

まさか、「死になさい」で始まる宗教の勧誘なんてあるまい。

男「それがあなたの為になるんです」

私「どうして死ななければいけないんですか」

男「死ねばこの先苦しまずにすむんですよ」

私「そりゃそうでしょうが・・・」

男「じゃあ何故死なないんですか」

私「だってやりたい事がまだあるし」

男「もし、うまく行けば、天国にいけます。そこでなさったらいい」

私「しかし、その保障はないでしょう」

男「ある有名な方のお言葉です。『死んだ人間がすべて天国に行くわけでない。しかし天国に行く人間は―』」

私「『皆、死んでいる』ですか?」

男「わかってるじゃないですか、なら死にましょう」

私「いやいや、でも痛いだろうし」

男「今ここで苦痛を味わって、それでいて天国に行けば、永遠に幸せなんですよ。一時の苦痛です」

私「だから、それで地獄に行ったら、苦しみ続けるんでしょ?」

男「ある有名な方のお言葉で―」

私「もう、いいです。結構です」

なんて無駄時間だったのだろうか。あの男はきっと隔離病棟から抜け出した精神異常者なのだ。

あの男がつけてこないか怖くなって、わざと遠回りをして家に帰った。

すると、家電伝言があった。ぷー太郎の弟からだった。

金を貸してくれ、という内容であったので、説教してやろうと電話をかけた。

私「自分でなんとか努力しなさい」

弟「なんで」

私「それがあんたの為になるんだから」

まさか嫌とはいうまい

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