20代の、長男であり、あたまのわるい私は時代の変化に適応出来そうも無い。
だから、まだ高校生にもなりたてで、ネットでろくに情報収集もできない私より馬鹿な(こんな時代で大学にも入れないだろう程の)弟にすべてを託してみようと思う。弟なら、今から挽回することはできる。有名私大文学部で留年してまで就職に失敗し、落ちゆく私に未来はないだろう。だからこそ、弟に希望を見て欲しい。
私はもう英語も中国語も頭に入ってこない。おそらく精神を病んでいる。ただ黙って天井を眺めていることに安らぎを覚える。この無為な時間を、弟に注ぐのだ。教育するつもりなど無い。気づいてくれるまで、たまに対話するだけの簡単な作業だ。
私は近くホームレスになる。と言っても、まだ親の資産があるから大丈夫だ。ただ、私が10年も居れば親の介護費用すら無くなるだろう。だから私は5年も待たずに家を出なければならない。それまでに貯めた資産の総量が、私のその後の人生を決める値となるわけだ。そしてその額など高が知れたもので、ホームレスになるしか道はないはずだ。
今は別居しているが、あの環境では弟はろくな人間になれない。いや、良く躾けられているので親に従順すぎると言えばいいか。ろくな人間が躾が行き届いているといえば変に聞こえる人もいるだろうが、どうせその価値観はすぐに潰える。少なくとも、今後の人生で躾などというものは化粧ほどの意味もない。無用の長物なのだ。
とにかく、私は一度マイホームに戻る必要がある。
弟には人生の自由度を増やす必要がある。気付きのない人間にだけはなってはいけない。おそらく弟も今から外国語の習得など難しいだろう。国内でのサバイバルに耐えられるだけの体力があるだろうか。いや、ないだろう。彼は親にも、私にも、そしておそらく他人にさえも、優しく、素直だった。自分でいうのも何だが、良く私の真似をした。こんな末路まで真似をされては困る。兄より強い弟になってもらわなくては困る。兄の、親の死を超えられるだけの強靭な精神がなければ困る。祖父の死で号泣してしまうような、おりこうすぎる人間になっては、困る。
私自身は、生きる気力もなくなりつつある。ホームレスになってからは地べたに這いつくばってでも、日本の終焉に立会うことすらできないかもしれない。
最近よく自ら望む死を想像しては我に返ることを繰り返すが、家を出た直後に駅で死ぬかもしれない。
とにかく、私の人生自体はもう先がない。