2010-01-02

言語学的センスの抜けた語学論……その2

その1 の続き。

元記事 国家生き残り戦略としての日本語リストラ http://d.hatena.ne.jp/michikaifu/20091031/1257023368 では

> ひらがなによる長音表記はすべて「-」で統一。「おおかみ」と「おうさま」はどうして表記が違う??

> どうして「お」と発音するのに「う」なのか、どれとどれだけ例外の「お」表記なのか、どうしてそうなるのか、

子供に聞かれても説明不能。どっちも「おーかみ」「おーさま」でいいじゃん。

> 助詞の「は」とか「へ」とかも、音どおりに統一したほうが簡単。

と言及されている。ここでも、視点の抜けがある。

第一言語習得」と「第二言語習得」ではやることが違う

元記事ではあくまでも、「子供に聞かれても」説明不能と言っている。おそらく、id:michikaifu さんが想定しているのは子供、すなはち当人が第一言語として日本語を学ぶ場合であろう。しかし、日本以外で日本語を学ぶ人の多くは日本語を「第一言語」ではなく、既に自分母語を持っている状態(例えば、英語なり、スペイン語なり、フランス語なり、韓国語なり、中国語なり)で学ぶ。これは、「第二言語習得」と呼ばれ、「第一言語」である母語の習得とは明確に区別して考える必要がある。(詳しく知りたい向きは "Second Language Acquisition" というキーワード検索してみるとよいだろう)

確かに、子供という立場で考えた場合、「おおかみ」「おうさま」の違いは不思議なものとして映るだろう。しかし例えば、我々日本語話者が英語を学ぶ際、"automotive" の先頭の "au" (発音記号で ɔː)と "motive" の "o" (発音記号で ou)が違う発音であるということは教えられれば理解できるし、逆に、どちらも日本語の「おー」に相当するなどと教えられれば却って通じない発音になってしまう。

このような、「第一言語習得」と「第二言語習得」を履き違えた論法は

日本語英語の「読み書き」をほぼ同時に習ったうちの子達も、「ひらがな」はむしろ、「英語スペル」よりやさしかった。

という部分にも見られる。 id:michikaifu さんのお子さん達は、英語日本語両方を「第一言語」として学んでいるのであって、多くの人が「第二言語」として日本語勉強する状況とは条件が違うのである。

また続く。かもしれない。

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