子供の頃から声優とラジオが好きだった。好きというか、それしか無かった。
何かスポーツに打ち込んだことも無く、趣味も長続きしない、飽きっぽい子供が唯一、熱が冷めずに続いているのが、声優とラジオ。
こんな人間が大学在学中にする行動といえば、ラジオ局への就職活動。
マスコミ関係は学歴フィルターで書類選考で落ちるのが関の山だが、必死の努力で筆記試験までたどり着けた。
だが、あまりにもレベルが高かった。いや、次元が違った。声優とラジオしか知らない三流大学の私には、まるでロゼッタストーンの暗号に見えた。
試験結果を待たなくても結果は判っていた。試験後、その日受けた放送局の大好きな番組をネットカフェで放心状態になりながら視聴した。
その後、夢は膨らむばかり、系列の専門学校も受けたが、中卒から入学可能の学校なのに受ける人材は一流大学の学生ばかり。倍率20倍の壁厚く、落ちた。
何度も夢破れているのに、まだラジオが死ぬほど好きだから、たちが悪い。
入社試験から月日が流れ、二つの事件が起こる。
一つ目は受験した放送局の携帯コンテンツで、内定を貰い入社できた猛者の日記を目にすることになる。
日記を読んであることに気づく、その人は受験した日に私が放心状態で聴いていた番組のスタッフになっていたのだ。
しばらく、その番組に投稿するのを辞めた。
二つ目は別の局のラジオイベントに参加した際、パンフレットを配っていて、パーソナリティーとスタッフの写真を掲載していた。
その中に、専門学校の集団面接で私の隣に座っていた、国立大学在学中と自己紹介していた青年の姿が……。
別番組でラジオマンになったことは知っていたが、私の好きな番組のスタッフになっていたとは、悔しくて純粋にイベントを楽しめなくなっていた。しかも、この番組はリスナーからイベント企画を募集していて、私は二年連続で企画を通している。
企画は採用されているからこそ、なぜ?企画は採用されているのに、、、と無情な気分になる。
同じ試験を受けた人がチャンスを掴んで憧れの場所にいる。
この状態になって、試験に落ちた時「"その辺"の学生より頑張ってるのに、、なぜ……」と嘆いた時に言われた恩師の言葉が反芻して蘇る。
だから勉強しとけって周りの人が口を酸っぱくして言ってただろう